研究課題
大腸癌は食生活の欧米化に伴って近年増加の著しい悪性腫瘍であり、特に女性では癌死のトップになっている。今後20年間は大腸癌の増加傾向が続くとみられ、その征圧が社会的にも強く望まれている。検診での発見率は全症例の約1割程度と見られ、いまだに有症状の進行癌が多いのが現状である。大腸癌の予後を最も左右する因子が肝転移であり、世界的には大腸癌の全病悩期間において4割近くの人が肝転移を発症するといわれている。大腸癌の肝転移の治療は肝切除もしくは化学療法であるが、その費用は高額であり医療費の高騰につながっている。腫瘍細胞は増殖するために脂肪酸合成酵素によって作られる遊離脂肪酸が必須であり、脂肪酸合成酵素阻害剤は新しい抗癌剤として注目を集め始めている。本研究では脂肪酸合成酵素阻害剤がヒト大腸癌細胞株に抑制効果があることを実証した。脂肪酸合成酵素阻害剤としてセルレニンとエピガロカテキンを選択し、細胞株としてHCT116とRKOを用いた。抗腫瘍効果はWST-8とBrdUによって検討した。セルレニン、エピガロカテキンともに著明な抗腫瘍効果を認めた。次にセルレニンが現在肝転移の化学療法として頻用されているFOLFOXの中心薬剤オキサリプラチンの抗腫瘍効果を増強するかin vitroとin vivoで検証した。その結果セルレニンとオキサリプラチンには相乗効果が認められ、HCT116の移植マウスモデルにおいてもセルレニンとオキサリプラチンを併用することで薬剤を半減することに成功した。またエピガロカテキンを投与することによりRKOを用いたヒト大腸癌肝転移モデルマウスにおいて著明な肝転移巣縮小効果が実証された。これらのことから脂肪酸合成酵素阻害剤は有効な大腸癌治療薬剤と考えられた。
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