我々は膵ラ氏島がブタ-ヒト間における自然抗体である抗NeuGc抗体依存性に廃絶されることを解明した。また我々は異種間ではCD47-SIRPαシグナル不応性によりマクロファージ性拒絶機構が働き、レシピエント種CD47をドナー細胞上へ表出させることにより、マクロファージ性拒絶が抑制できることを報告した。本研究ではCD47-SIRPαシグナル誘導により抗NeuGc抗体性依存性拒絶が克服できるか否か検証することを目的としている。 まずNeuGcノックアウトマウスのB細胞におけるSIRPαの発現を確認した。その結果、脾臓や骨髄、末梢血中のB細胞にはSIRPαはほとんど発現しておらず、腹腔細胞中のB細胞にのみSIRPαが強発現していた。また腹腔内B細胞のphenotypeを解析したところ、約80%がB-1細胞で、さらにB-1a、B-1b細胞は共にSIRPαを高発現しているが、B-2細胞には発現していないことを確認した。 次にCD47-SIRPαシグナル誘導による抗体産生抑制効果を検証した。当初NeuGcノックアウトマウスにおける抗NeuGc抗体産生抑制効果を解析する予定であったが、まずは測定が簡便なGalノックアウトマウスにおける抗Gal抗体抑制効果の検証を行った。その結果、マウスCD47を遺伝子導入したブタ細胞で免疫した群では、無処置のブタ細胞で免疫した群と比べ抗体価は低下し、またCD47-SIRPαシグナルを抗SIRPα抗体で遮断すると、マウスCD47を遺伝子導入したブタ細胞で免役した群でも抗体価が上昇することを証明した。 今後はNeuGcノックアウトマウスにおける抗NeuGc抗体産生抑制効果を証明し、ブタ-マウス間in vivo疾患モデルで有効性を証明した後、CD47塩基配列相同性が更に低いブタ-ヒト化マウス間in vivo疾患モデルで抗NeuGc抗体依存性拒絶の抑制効果を検証する。
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