研究課題/領域番号 |
23791486
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
尾上 隆司 広島大学, 病院, 病院助教 (90549809)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | シアストレス / 類同内皮細胞 / 抗原提示 / 免疫寛容 |
研究概要 |
生体肝移植では肝グラフト血行動態が移植後の肝機能に大きく影響を与える。我々の検討では肝移植における肝グラフト移植後の門脈圧が亢進している患者の予後は有意に不良であり、術後の抗ドナー反応亢進および拒絶反応を高率に認めた。この事実は門脈圧上昇により拒絶反応が惹起されている可能性を示している。肝臓は、他の臓器と比べ免疫寛容を誘導しやすい臓器として知られている。我々はその一機序として肝類洞内皮細胞が免疫寛容性を持ち、クラスII抗原やCD80/86分子を表出し抗原提示を行うことでドナー抗原反応性T細胞を寛容化し、拒絶反応を抑制する事を明らかにしてきたが、門脈圧が亢進した状況ではシアストレスが類同内皮細胞に対し重要な影響をきたす可能性が十分に考えられる。シアストレスと肝臓の持つ免疫寛容能喪失との関わりを解明する上で、まず我々は門脈圧亢進状態を再現する目的で70%肝切除マウスモデルを確立した。さらにこのマウスの肝構成細胞をstimulatorとしてCFSE細胞質染色による細胞分裂の視覚化を応用した同種リンパ球-肝構成細胞混合試験(CFSE-MHLR)を用いて門脈圧亢進状態の肝臓に対する同種マウスT細胞反応を解析した。MHLRでは、70%肝切除群の方が無処置群と比べて、CD4、CD8T細胞共に有意な同種反応の亢進を認めた(p<0.05)。さらに肝切後経時的に肝類洞内皮細胞(LSEC)を抽出し表面抗原の変化を解析したところ、術後3日目以降、70%肝切除群では無処置群と比べ、MHCクラスIIや副刺激分子であるCD80・CD40表出が有意に低下し、特にMHCクラスII、CD80では表出低下が14日間持続した。これらの結果よりシアストレス下では類同内皮細胞はその抗原提示能を喪失し、結果、肝臓の同種反応性T細胞に対する免疫寛容性が低下し拒絶反応が惹起されることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度はマウスを用いたシアストレス下での類洞内皮細胞解析とin vitroアッセイシステムの確立を目的とした。この内、シアストレス下での類洞内皮細胞プロファイルおよび免疫抑制能の評価では、(1)in vivoでのシアストレス環境モデルとしての70%肝切除マウスモデル確立 (2)70%肝切除マウスにおける同種免疫応答アッセイの確立と評価 (3)70%肝切除マウスモデルにおける類洞内皮細胞フェノタイプ解析を行い、上記の結果を得た。類洞血流およびシアストレスを再現するin vitro培養システムの確立に関しては、類同内皮抽出方法はすでに確立し、現在培養システムの確立を行なっている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、in vivoモデルとしてラット過小グラフト肝移植を用いた類洞内皮細胞免疫抑制能破綻の評価および薬剤門脈注入療法による免疫抑制能回復効果の評価を行う予定である。具体的にはACI ラット(ドナー)からLEW ラット(レシピエント)の組み合わせで100%、50%、30%グラフトを用いた同種ラット肝臓移植(それぞれ全肝、部分肝、過小グラフトモデル)を行い、移植肝の生着を評価する。臨床の過小グラフト症例ではPGEの持続門脈注入にて拒絶の抑制および生存率の改善を認めた。そこで30%グラフト肝移植(過小グラフトモデル)群の一部はカテーテルを腸間膜静脈に留置し Osmotic pump(Alzet)を用いてPGEを1.0ug/Kg/minで7日間門脈注入を行い同様に移植肝の生着を評価する。拒絶の評価はグラフト組織での病理学的診断を用いるが、末梢血または脾細胞を用いた共培養(CFSE-MLR)での免疫学的診断でも評価する。同時にグラフト肝組織の免疫染色を行い類洞内皮細胞におけるFasリガンドやPD-L1の表出を評価する。さらに、マウスを用いた予備実験にて70%肝切除マウスでの残肝には免疫メディエーターであるHMGB-1が発現していることを見出している。シアストレス下の類同内皮細胞のフェノタイプおよび機能変化のメカニズムとしてのHMGB-1の関与をブロッキング抗体を用いてin vitroおよびin vivoで評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
H24年度は、実験遂行のためのマウスや抗体などの試薬購入目的に1000000円(物品費)、得られた成果を学会などで発表する目的に300000円(旅費)、成果を論文として発表する際の投稿費用目的に100000円(その他)を使用する予定である。
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