研究課題/領域番号 |
23791492
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
尾島 敏康 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (60448785)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | iPS細胞 / 樹状細胞 / アデノウイルスベクター / 腫瘍抗原遺伝子 |
研究概要 |
本研究課題はCEA遺伝子導入ES細胞由来樹状細胞(DC)を用いた癌ワクチン療法であり,当初,ES細胞由来DCでの研究で成果があれば,人工多能性幹細胞(iPS細胞)由来DCを用いた癌ワクチン療法を行う予定としていた.しかし近年,ES細胞由来DCに対して複数報告があり,さらに癌ワクチン療法を行うにあたり,同系異種ES細胞を用いるより,自己iPS細胞を用いる手法が妥当とも考えられた.結果,私たちはiPS細胞由来DCを用いた癌ワクチン療法の基礎研究から研究を行うこととした.そのため交付申請時の研究実施計画とやや研究内容が異なった. 本年度の研究実績 (1)マウスiPS細胞の培養・継代:マウスiPS細胞であるiPS-MEF-Ng-200-17(Nature 448: 2007)を当教室で行った.(2)マウスiPS細胞からDCへの分化誘導:iPS細胞からのDC誘導を行い(Stem Cells 27: 2009),BM-DCとの比較検討を行った.細胞表面マーカーのチェック,DCのサイトカイン産生の比較検討,DCの遊走能のチェックを行い,iPS由来DCがBM-DCと比較して変わらないことを確認した.(3)アデノウイルスベクターの作製:本研究ではiPS細胞由来DCにメラノーマ腫瘍抗原遺伝子であるgp-100を導入する手法を行った.そのツールとなるアデノウイルスベクターであるAxCA-gp100をCOS-TPC法にて作製した.(4)DCへの遺伝子導入:iPS細胞由来DCへgp-100遺伝子を導入し,蛋白発現をFACSにて確認した.現在gp-100遺伝子導入iPS-DCを用いたワクチン実験を進行中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は元来ES細胞由来DCを用いたワクチン療法の基礎研究を予定していたが,前述のごとく,iPS細胞由来DCを用いた研究からスタートしたため,交付申請時の実施計画と比較することはできないが,今年度は当初の研究計画より早い進行で研究が進んでいると自負している.当教室でのiPS細胞の取り扱いは初めてであったが,数回他施設への研修,その他企業主催の研修に出席し,培養を開始した.特に問題なく経過し,大量のストックに成功している.またDCへの分化誘導に関してもほぼ問題なく成果をあげている.現在,研究の重要なパートである実際のワクチン実験を行っている.平成24年秋からの学会から本研究の成果を報告する予定としている.また平成24年度での論文発表を目標としている.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究予定(1)現在進行中である腫瘍抗原遺伝子(gp-100)導入iPS細胞由来DCのワクチン実験を成功させる.具体的にはgp-100特異的な細胞傷害活性の確認,実際の腫瘍モデルでの抗腫瘍効果の検討を行う.この時点での研究成果を論文発表する予定としている.(2)腫瘍抗原遺伝子発現iPS細胞の作製,DCへの分化誘導:上記研究が終了後,iPS細胞にエレクトロポレーションを用いてgp-100遺伝子をstable transfectさせる.gp-100発現iPSからDCを分化誘導し,実際のワクチン時に大量に使用できる環境を整備する.その後これらを用いた癌ワクチン療法の可能性を同様に腫瘍モデルを用いて検討する予定である.(3)CEA遺伝子導入iPS細胞由来DCおよびCEA-transgenic mouse (CEA-Tg) を用いた癌ワクチン療法の基礎研究:上記研究終了後からpre-clinical studyとしてCEA-Tgを用いた研究を行う.CEA遺伝子導入iPS細胞を作製,これをDCへと分化誘導させる.このDCを用いた癌ワクチン療法を可能性をCEA-Tgを用いて検討する.消化器癌に高率に発現するCEAをターゲットとすることでより実際的なワクチン療法への可能性を追求する.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用計画次年度の研究費の大半は試薬,細胞などの研究維持物品である.具体的には,サイトカイン (GM-CSF, IL-4など) ,MACS用beads,アッセイ用のクロム,コンピテントセル,抗生剤,medium,血清などである.
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