研究課題/領域番号 |
23791492
|
研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
尾島 敏康 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (60448785)
|
キーワード | iPS細胞 / 樹状細胞 / 腫瘍抗原 / アデノウイルスベクター |
研究概要 |
本年度は昨年度に作製したgp-100遺伝子導入iPS-DCのワクチン実験を行った.ほぼ予定通りに研究は進んでいる. 1. gp100遺伝子導入iPS-DCをC57BL6Jマウスに投与し,14日後に脾臓採取し,リンパ球を分離し,5日間のin vitro 刺激を行いbulk CTLを樹立した.そのCTLからCD8+CTLを分離し,細胞傷害活性を51Cr-release assayを用いて検討した.結果gp100-iPS-DCはgp100発現腫瘍細胞のみを選択的に傷害した.またこのCTL活性は通常の骨髄由来DC(BMDC)と同等であり,作業仮説どおり,iPS由来DCはBMDCと同等のAPC機能を有することが実験的に立証されたため,下記の腫瘍チャレンジを行った. 2. gp100遺伝子導入iPS-DC,同様にgp100-BMDCまたコントロールとしてコントロールベクター導入iPS-DC BMDCの4群にわけて,gp100発現メラノーマ腫瘍であるB16を摂取した腫瘍モデルにワクチンを行った.継時的に腫瘍体積を測定した.結果コントロール群では腫瘍増殖抑制は認められなかったが,gp100-iPS-DCは著明な腫瘍増殖抑制を認め,この効果はBMDCと同等であった.以上から腫瘍抗原遺伝子導入iPS-DCはBMDCと同等のワクチン効果を発揮することが実験的に立証された. iPS-DCの機能解析結果,腫瘍抗原遺伝子導入iPS-DCのワクチン効果をまとめ,論文を作製した.現在某ジャーナルから追加研究を提示され,現在行っている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は元来ES細胞由来DCを用いたワクチン療法の基礎研究を予定していたが,これまでの説明のごとく,iPS細胞由来DCを用いた研究からスタートしたため,交付申請時の実施計画と比較することはできないが,今年度は当初の研究計画より早い進行で研究が進んでいると自負している.前年度にはiPS-DC細胞の機能解析を行い,作業仮説どおり,iPS-DCがBMDCと同等のDC機能を持つことが確認されたため,本年度はそのAPCとしての役割を動物実験にて行った.結果,腫瘍抗原遺伝子導入iPS-DCワクチンは通常の骨髄由来DCと同等のワクチン効果を発揮した.ミスなく研究が進み,良好な結果を得たため,当初の計画以上に進んでいると判断した. すでに論文は投稿しており,某ジャーナルからRivicedの指示があり,修正作業を行っている.その他2012年日本癌学会,2012年日本癌治療学会で研究成果を発表し,高い評価を得たと自負している.
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究予定 1. 現在投稿中のジャーナルから追加実験の指示があり,iPS-DC機能解析について,追加実験を行っている.具体的にはiPS-DCの所属リンパ節への遊走能についての追加実験とCTL機能評価についての追加実験である.今年度前半は追加実験と論文修正を予定している. 2. 本年度後半はCEA遺伝子導入iPS細胞由来DCおよびCEA-transgenic mouse (CEA-Tg) を用いた癌ワクチン療法の基礎研究を予定している.上記研究終了後からpre-clinical studyとしてCEA-Tgを用いた研究を行う.CEA遺伝子導入iPS細胞を作製,これをDCへと分化誘導させる.このDCを用いた癌ワクチン療法を可能性をCEA-Tgを用いて検討する.消化器癌に高率に発現するCEAをターゲットとすることでより実際的なワクチン療法への可能性を追求する.
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の大半は試薬,細胞などの研究維持物品である. 具体的には,サイトカイン (GM-CSF, IL-4など) ,MACS用beads,アッセイ用のクロム,コンピテントセル,抗生剤,medium,血清,マウスなどである.
|