肝移植時に摘出された胆道閉鎖症児の肝組織(20例)と、乳児剖検例の肝組織(10例)を対象として、テロメア長の測定をSouthern blot法とQ-FISH法を用いて解析した。Southern blot法では、Terminal restriction fragment(TRF)をテロメア長とした。Q-FISH法では、肝組織のパラフィン切片上でFISH法を施行し、独自に開発した解析ソフトTissue Teloによってテロメア・セントロメア蛍光光度比(TCR)を求め、テロメア長とした。胆道閉鎖症児と乳児剖検例の肝組織のnormalized TCR(NTCR)を測定し、Box PlotとMann-Whitney’s U testを用いて検討した。また、胆道閉鎖症において、Pediatric end-stage liver disease(PELD)スコアとテロメア長の関係をPearson’s Correlation Coefficientを用いて検討した。 胆道閉鎖症肝のTRFは、正常児と変わらなかったが(p=0.425)、NTCRは、正常児に比して短縮していた(p<0.001)。また、テロメア長とPELDスコアの回帰分析においては、有意な相関を認めた(p<0.001)。 胆道閉鎖症のような肝細胞の数倍もの間質細胞が存在する組織におけるテロメア長の測定は、肝細胞を選択的に測定できるQ-FISH法が有用であった。胆道閉鎖症のテロメア長とPELDスコアの高い相関から、胆汁性肝硬変の進行は細胞老化の促進の一因であると考えられた。胆道閉鎖症のテロメア長は非常に短いため、胆道閉鎖症には染色体の不安定性が存在し、将来癌が発生する可能性が示唆された。テロメア長の短い胆道閉鎖症症例は、自己肝の予備力が低いことを反映しており、将来的な肝移植適応を考慮すべき結果であった。 以上は、World Journal of Surgery. 2012 Apr;36(4):908-16(Hepatocellular Telomere Length in Biliary Atresia Measured by Q-FISH) に発表した。
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