研究概要 |
本研究は、1.家族性乳癌の原因遺伝子BRCA1の酵素活性が抑制されるとCamptothecin(CPT), PARP阻害薬(PARPi)に高い感受性を示すが、Mitomycin C(MMC)には感受性を示さない、2.多くの癌で予後不良のバイオマーカーとされるPLK1の過剰発現がBRCA1の酵素活性を抑制するという2つの発見に基づき、PLK1の過剰発現を伴う予後不良癌はCPT, PARPiという抗癌剤が効果的であるが、MMCは効果的でないという仮説を検証するものである。この仮説が証明されると、予後不良癌の効果的治療が選択でき、多くの癌で予後の改善が期待できる。初年度は12種類の代表的な癌細胞株を用い、PLK1蛋白発現レベルとCPT, PARPi, MMCに対する抗癌剤感受性の関連をみた。蛋白発現量はウエスタンブロッティングを行いデンシノメーターで定量した。PLK1発現量が最も少ない細胞株の100倍以上の発現をもつ細胞株は4種あり、これらをPLK1-high group、残りの細胞株をPLK-low groupとした。薬剤感受性はセルタイターブルーを用いて測定し、それぞれの薬剤に対するIc50を算出した。これらの関係を解析すると、PLK1-high groupはPLK1-low groupに比べCPT, PARPiに対して有意に高い感受性を示し、MMCに対する感受性は二群間に有意差はなかった。このように本実験の仮説を支持する結果を得た。今後は以下に示すように、さらに多くの細胞株を用いた実験、および代表的な細胞株を免疫不全動物に接種しin vivoでの再現性の検討、さらに臨床サンプルを用いた検討をする予定である。
|