研究課題/領域番号 |
23791504
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
西川 裕之 聖マリアンナ医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究技術員 (90387077)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ガン抑制遺伝子 |
研究概要 |
平成23年度研究計画に従って、細胞内におけるBAP1と結合するタンパク質の同定を行った。 複数の細胞株を用意しFLAGタグ付きのBAP1が発現するよう遺伝子を導入した後に細胞がDNA損傷を起こすように薬剤又は放射線を当て細胞を溶解しFLAG抗体で免疫沈降を行い、プロテアーゼ処理をしてBAP1タンパク質及び結合タンパク質の複合体をペプチド化した。このペプチドを2次元HPLCにて陽イオンカラムと逆相カラムを用い40フラクションに分離させ、LC-MSにて分析を行った。得られた質量データはMASCOT及びX!Tandemの2つのプログラムにてBAP1結合タンパク質の同定を行った。 結果、DNA障害を起こす前後にてBAP1との結合が変わるタンパク質を複数発見することが出来た。細胞内ではDNA損傷を認識し、損傷部位のクロマチン構造を変換することにより修復過程を進行させると考えられている。これまでにDNA修復を行う際のクロマチンの構造変換機構としてヒストンの化学修飾、ATPの分解エネルギーを利用したクロマチンリモデリング、ヒストンシャペロンによるヒストンの交換反応が報告されている。 今回新しい発見として、転写時のヒストンシャペロンとして報告のあるタンパク質が同定された。DNA損傷時にBAP1との結合量が上がることからBAP1-ヒストンシャペロンの複合体を形成することにより、DNA損傷に応答して転写同様にヒストンの交換を行いクロマチン構造の変換を行っているものと予想される。これについては、24年度にて確認実験を行う予定である。また、すでに結合があると報告されているタンパク質よりも多くのペプチドを同定したタンパク質が数点ある為、それらについても今後詳しく検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度実験計画に基づいて質量分析を用いた目的タンパク質との結合タンパク質をスクリーニングすることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
今回同定に成功したDNA損傷応答型BAP1結合タンパク質の機能解析を行う。方法は、24年度実験計画に従いコメットアッセイ、DNA障害感受性試験、細胞免疫染色を行う。実験計画にはないがヒストンシャペロンとして同定されている為、ヒストンの入れ替え等の機能についてもBAP1がどのように関わるか検討する。質量分析カラムが研究計画の想定よりも耐久性があり次年度使用額112,028円が生じた。ヒストンの入れ替えについて検討実験費に使用する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
交付申請書の24年度研究計画に基づいて研究を行うためにコメットアッセイ、DNA障害感受性試験、細胞免疫染色をおこなう。以上の研究を進めるためにコメットアッセイに約20万円、DNA障害感受性試験に約40万円、細胞免疫染色に約30万円ヒストンシャペロンの検討実験に約20万円を使用する予定である。
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