研究課題/領域番号 |
23791505
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
山路 純子(田代純子) 大阪医科大学, 医学部, 講師 (40340559)
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キーワード | 移植・再生医療 / 免疫学 / 遺伝子 / 細胞・組織 / 生体分子 |
研究概要 |
(1)我々が単離したヒトMMR1は同種異系(アロ)MHCへの結合能が示唆されるが、リガンドは未同定な事から、ヒトMMR1のリガンドについて探索を試みた。結果、①ビーズに固定した80種類のHLA-A,B,Cとの結合試験より、ヒトMMR1がリガンドとするHLAの1つがHLA-B44である事、②可溶化HLAとの結合試験より解離定数が10の-9乗[M]程度の強い結合能が示唆され、ヒトMMR1にMHCに対する結合能が示された。これらの成果は英論文として学術雑誌に掲載された。 (2)生体におけるMMRの機能を知る為、我々はMMR2遺伝子破壊(KO)マウス(C57BL/6系統)を樹立した。平成24年度の解析の結果、①MMR2KOマウスは単球および末梢血単核球において、MMR2だけでなくMMR1もmRNA・タンパクでの発現が見られなかった。②皮膚移植の結果(研究協力者の前田 省吾(大学院生:本学 形成外科学)と共に実施)、MMR2KOマウスは、Dd-Tg, Kd-Tg, DdKd-Tgマウス(MMR1・2のリガンドであるH-2DdやH-2Kdを全身で強制発現させたマウス)の皮膚は拒絶出来ず生着し、MHC class II・マイナー抗原、あるいはそれら全てがアロのB10D2, Balb.B, C3H近交系マウスの皮膚は拒絶した。③MMR1・2のリガンドであるアロMHCのH-2DdやH-2Kdを強制発現させたリンパ球系腫瘍のEL-4細胞(Dd-, Kd-, DdKd-EL-4)を皮内移植した所、MHC数依存的にCD8+TCRαβ細胞による拒絶が認められた。以上より単球やマクロファージ系細胞上のMMR分子やCD8+T細胞上のTCR分子は標的とする細胞種が異なり、各々皮膚やリンパ球系のアロ移植片の認識や拒絶に重要である事が示唆された。現在これらの成果は英論文として投稿を準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度の計画内のMMR2KOマウスに関する実験において、MMR2遺伝子破壊により皮膚のアロ移植片の拒絶の障害の表現型が明らかとなったが、その障害に起因するものがMMR分子を発現している血球によるものか、または免疫機能に関わる臓器や組織に関わるものか等を解析する必要があり、より詳細なMMR2KOマウスの身体各部位と発達、反応性について解析予定である。又、ヒトMMRのリガンド探索と同定の計画において、ヒトMMR2において、80種類の各種HLA-A,B,Cタンパクによる結合試験から、新たに候補HLAが2種類同定された。今後、この候補HLAのヒトMMR1に対する結合を確定し生体における役割を明らかにするため、単一HLAとの結合の強さや生体における役割の検討を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
以下に変更後の平成25年度の実験計画(昨年度の遅延した計画を含む)を示す。 実験系1 遺伝子ノックアウトマウスに関する計画:(1)MMR2KOマウスの発達について遺伝子破壊による影響を身体各部位において野生型マウスと比較検討する。(2)MMR2KOマウスに皮膚のアロ移植片の拒絶の障害を認めた事から、特にリンパ系組織等の免疫関連の組織や細胞において①アロ抗原や②アロ以外の外来抗原に対するMMR2KOマウスの免疫能を検討する。以下の一般的に用いられる実験系によりMMR2KOマウスと野生型における反応を比較検討する。①白血球混合試験(アロ抗原に対する試験):MMR2KOまたは野生型マウスの脾臓細胞を、アロのBALB.cマウスの脾臓(マイトマイシンCにより細胞増殖の不活化処理)と混合する事により、アロ抗原に対する免疫細胞の増殖を検討する。②接触性皮膚炎反応(アロ以外の外来抗原に対する試験):ハプテンを感作したMMR2KO又は野生型マウスに対し、ハプテンを耳介に塗布しMMR2KOマウスと野生型における炎症反応を比較する。 実験系2 ヒトやマウスのMMRの解析に関する計画:(1)ヒトMMR2に関する計画:同定したリガンドの結合の強さや生体における役割を調べるため、ヒトMMR2タンパク又は末梢血単核球に対し、蛍光標識されたリガンドHLAタンパクを用いて、フローサイトメーター(BD FACSAria 大阪医科大学研究機構(学内共同機器))による結合力(解離定数Kd)の解析や反応性を解析する。(2)MMRの生体における発現動態の解析:生体におけるMMRの役割を検討するため、マウスの組織や培養細胞やヒトの培養細胞を用いてMMRの発現動態をRT-PCR法を用いて解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額の253,206円については、平成24年度に予定をしていた「ヒトやマウスのMMR1・MMR2の性質の解析に関する計画」内の、ヒトMMR2の解析の検討において、若干遅延が生じたため、平成25年度の研究計画に組み込まれた「実験系2(1)」(推進方策欄)に使用を予定している。また、平成25年度研究費の使用予定額については、「実験系1(1)・(2)、実験系2(1)・(2)」(推進方策欄)の計画に対して交付申請書の通りに予定しており、内訳は、物品費として350,000円(細胞生物学実験の試薬消耗品・器具類・研究関連消耗品に150,000円、分子生物学実験の試薬消耗品・器具類・研究関連消耗品に150,000円、実験動物やその関連消耗品等に50,000円)、学会旅費として250,000円、その他(印刷費・研究成果投稿料等)として100,000円を予定している。
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