研究概要 |
本研究課題を開始するにあたり、乳癌増殖に及ぼす効果を解明するとともに、生体への影響を検証する目的で、MNU誘発ラット乳癌モデルを用いたhCGの抗腫瘍効果の検討を行った。3週齢雌Lewisラット60匹に対し、60mg/kg MNUを単回腹腔内投与し、乳癌発生を促した。発生した乳癌が触知可能な大きさとなった時点で、対照群、100IU hCG投与群、300IU hCG投与群にわけ、hCG投与群には生理食塩水に溶解したhCGを連日腹腔内投与し、hCGを18回投与した時点で実験終了とし、ラット血清を採取するとともに乳癌を摘出、病理組織学的検討を行った。全実験期間を通じラットの体重は各群差をみなかった。実験終了時の乳癌湿重量は、対照群6011.3±1042.2mg、100IU hCG投与群で5613.5±1142mgに対し、300IU hCG投与群では3482.4±817.3mgと有意な低下をみた。腫瘍のホルモン受容体(ER, PgR, LHCGR)の発現およびTUNEL陽性細胞数は各群差をみなかったが、PCNA陽性細胞数は対照群と比較し、300IU hCG投与群で有意な低下をみた。血清エストロゲンおよびプロゲステロン値は対照群と比較し、300IU hCG投与群で有意な増加をみた(対照群E2: 45.58±9.6pg/ml, P: 16.02±5.19ng/ml, 300IU hCG投与群 E2: 98.3±25.37pg/ml, P: 103.6±44.67ng/ml)。300 IU hCG投与群の卵巣は対照群と比較して卵胞形成が乏しく、子宮は対照群と比較して体重あたりの湿重量が増加したとともに、嚢胞状に拡張した内膜腺が組織学的に観察された。したがって、hCGの乳癌増殖抑制効果は、妊娠期を模倣した卵巣からのエストロゲン・プロゲステロンの分泌亢進が作用機序として推察された。
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