(単純臓器保存の組織学的検討) 1.実験モデル:Balb/cマウスの心臓を摘出し、HTK保存液、通常凍結、磁場環境下凍結に分けて一定時間保存。2.実験群① HTK保存液:各臓器をHTK保存液に単純浸漬して-4℃で保存。② 通常凍結:冷ヘパリン加乳酸リンゲル液に浸漬し、-80 度の超低温冷蔵庫で保存。③ 磁場環境下凍結保存:冷ヘパリン加乳酸リンゲル液に浸漬し、磁場強度を0.1mT、1mT、10mTの3レベルで設定し-30℃で保存。3.結果① 磁場環境下凍結保存の温度変化:1mT、10mTでは3分で-30℃へと速やかに達したが、0.1mTでは-30℃まで30分を要していたが、どの条件でも15分以内に設定条件に達した。②組織学的障害:通常凍結群では、心筋組織中に空隙が形成されていた。大動脈・肺動脈には内膜剥離が認められた。磁場環境下保存では心筋の組織構造は保たれており、脈管系にも異常所見を認めなかった。HTK保存液では心筋組織の融解壊死が認められたが脈管系の組織は保たれていた。③生化学的マーカー:保存臓器より漏出した生化学的マーカーの分析では、CK-MBが過冷却凍結群で有意に低かった。 (移植グラフトの機能評価) 1.実験モデル:Balb/cマウスから摘出した心臓を上記の①HTK保存液、②通常凍結、③磁場環境下凍結の3群に分けて24時間、3日間、7日間保存した後、Balb/cマウスへ移植を行う。2.結果②通常凍結のグループにおいてはどの保存時間でも心拍の再開は得られなかった。①HTK保存液、③磁場環境下凍結においては、24時間では心拍再開はすべて認められたが、3日、7日では①HTK保存液では心拍再開が見られなかったが、③磁場環境下凍結では、3日で50%、7日で20%に心拍の再開を認めた。 磁場凍結下保存では、単純保存実験、心移植モデル実験においても、臓器障害の少ない保存法であることが示唆された。
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