研究課題/領域番号 |
23791512
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
林 洋毅 東北大学, 大学病院, 助教 (30422124)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 二重特異性抗体 / 上皮増殖因子受容体 |
研究概要 |
遺伝子工学的手法を用いて上皮増殖因子受容体(EGFR)およびCD3の両者に結合する二重特性人工抗体を作製した。抗体の発現には哺乳類細胞(CHO細胞)を用いており、ゲル濾過を行い精製した。 これらの二重特異性抗体がEGFRおよびCD3に同時に結合する能力を持つことをフローサイトメトリーを用いて確認した。また、Fc領域によりNK細胞に結合することを同様にフローサイトメトリーで確認した。これにより、抗EGFR抗体、抗CD3抗体を同時に認識するIgG1人工抗体であることが確認された。 各種胆道癌細胞株におけるEGFR分子の発現量とKRAS変異の有無について確認をした。これらの癌細胞株に対して、二重特異性人工抗体を作用させることにより、ある種の癌細胞株においては、癌細胞の増殖抑制効果が確認された。この効果は既に臨床応用されている抗EGFR抗体(セツキシマブ)や親抗体である528IgGと同等の効果を有していた。 さらに、癌細胞に対して二重特異性人工抗体と活性化リンパ球(T-LAK細胞)を作用させると、強力かつEGFR発現に特異的な癌細胞殺傷効果が確認された。この効果はCetuximabや528IgGとT-LAK細胞の投与の組み合わせでは確認されず、CD3に結合することにより、T-LAK細胞が癌細胞を直接的に殺傷している効果であることが示唆された。さらに、末梢血単核球成分(PBMC)と二重特異性抗体を用いてもT-LAK細胞とほぼ同等の効果を示した。このような効果はFcを有さないdiabody型二重特異性抗体では認められず、Fc領域があることにより、ADCC活性が誘導去れていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年の震災の影響により、研究室の破損、実験器具の破損、実験試薬の消失があった。さらには断水による実験不能期間や、実験室復興に時間が要した事などもあり、研究はほぼ半年中断された状態であった。 その後、徐々に研究環境は改善しつつあるが、研究については遅れを取り戻す状態にはなっていない。
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今後の研究の推進方策 |
作製した、二重特異性抗体が機能することはほぼ証明されており、今後、この抗体を用いてさらにin vitro, in vivoでの研究を進める予定である。 今後は、抗体と抗癌剤、放射線治療の併用などによるアポトーシス誘導の有無(これにより、相乗効果が期待される)や、EGFRシグナルの阻害効果をEGFRのリン酸化抑制効果などにより確認したい。 また、免疫不全マウスを用いた治療実験モデルを作製し、in vivoでの効果を確認する予定である。この際、NK細胞を有するSCIDマウスと有さないNOGマウスを用いることで効果の差を検討し、ADCCの関与の有無についても証明する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に、実験器具や培養器具などの購入に当てる予定である。また、実験試薬、抗体などの購入費用に当てる。 国内学会において、抗体医薬の最新の知見の収集を行なう予定である。 また、胆道癌切除標本を利用して、日本人胆道癌患者におけるRGFR発現率やKRAS変異率について求めることは、胆道癌に対する抗体治療に於いて重要な基礎的データとなるため、これらの検索の為に使用する予定である。
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