研究課題
上皮増殖因子受容体(EGFR)と,リンパ球表面マーカー(CD3)の両者に対して1価ずつ,もしくは2価ずつの結合部位を有する,人工二重特異性抗体(Ex3 bispecific antibody)を作製した.これらは既存のFc領域を有さない二重特異性抗体(Ex3 diabody)と比較して,極めて強い行腫瘍活性を示した.その理由としてはIgG型にしたことによる安定性,結合能力の上昇,Fc領域によるFc活性,補体活性の誘導などが関与していることが推測された.EGFRを介するシグナル伝達は癌細胞は増殖,浸潤,アポトーシスの回避,血管新生など様々な腫瘍増殖に関与していることが知られている.この受容体を1.抗体でブロックし,シグナル伝達を阻害することは腫瘍制御に有力な方法である.さらに,二重特異性抗体とすることで,2.リンパ球を癌細胞近傍に誘導可能なこと,Fcを有することで,3.免疫応答細胞の活性化や,4.補体経路の活性化なども併せ持ち,癌免疫治療に極めて有用なツールとなり得ることが示された.H25年度の成果として,この二重特異性抗体は既存の抗EGFR抗体医薬と異なり,KRASの変異の有無に関わらず効果を発現することが示され,こ1.以外に2.~4.の効果を示したものである.すなわち,Ex3 bisipecific diabodyは4つの機能を有しており,胆道癌の治療に有用なツールとなり得ることが示された.また,EGFRは胆道癌のみならず多くの固形癌に高発現しており,様々な癌に応用できる可能性が様々な細胞株を用いて示された.今後の臨床応用に向けて,この分子の生体内での安定性,安全性などを評価する必要がある.
すべて 2013
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Protein Eng Des Sel.
巻: 5 ページ: 359-367
10.1093/protein/gzt009