研究課題/領域番号 |
23791513
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
渡辺 和宏 東北大学, 大学病院, 助教 (30569588)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 潰瘍性大腸炎 / 大腸全摘術 / 回腸嚢炎 / 家族性大腸腺腫症 |
研究概要 |
潰瘍性大腸炎および家族性大腸腺腫症では大腸全摘・回腸嚢肛門吻合術が行われることが多いが、術後の回腸嚢炎あるいは回腸嚢腺腫症はこれらの症例の術後のQOLに直結する重要な要素である。また、これらの病態の解明は、両疾患そのものの病態の解明につながる「カギ」となる可能性を秘めているとも考えられる。本研究を通して将来的に症例のQOLの改善につながることはもとより、原因不明である潰瘍性大腸炎の病因解明につながることが期待できると考えている。今年度は、臨床検体の採取を中心に行った。当科では潰瘍性大腸炎の手術は通常2回あるいは3回に分けて行っている。すなわち、1回目に大腸亜全摘、2回目に直腸切除・回腸嚢肛門吻合、3回目に回腸瘻閉鎖を行う3期分割手術と、1回目に大腸全摘・回腸嚢肛門吻合まで行う2期分割手術である。今年度の潰瘍性大腸炎の新規手術症例は8例、回腸嚢肛門吻合術を施行した症例は6例と残念ながら例年より少なく、家族性大腸腺腫症の手術症例は0例で思うように検体を集められなかった。回腸嚢肛門吻合術を施行した6例のうち未成年の1例を除く5例と、次年度の症例を合わせて今後は経時的変化を見て行くことになる。経時的にみている症例で現在のところ回腸嚢炎を発症した症例はない。術後1年間の回腸嚢炎発症率は8.1%であるので、この症例数では研究期間内に回腸嚢炎を起こす症例は少ないと考えられ、解析は困難であると考えられる。臨床検体を用いることが非常に重要な研究であるため、次年度もまず臨床検体数を増やす努力を優先して行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
潰瘍性大腸炎・家族性大腸腺腫症にて大腸全摘・回腸肛門吻合を行った症例が例年より少なく、臨床検体の収集に苦労している。潰瘍性大腸炎の手術自体は大きくは減っていないが、高齢者、癌合併例など分布が変化してきたため肛門温存手術である回腸肛門吻合術を行った症例が減少してきた印象である。しかし、症例数は例年かなりばらつきがあり、これまでも多い年と少ない年は存在してきた。次年度は症例が増え、より多くの臨床検体を収集できることを期待するとともに、これまでの症例も欠けることがなく経過を追っていけるようにしなければならないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に引き続き、新規潰瘍性大腸炎手術症例から検体を採取する。また、今年度検体を採取した症例に対して経時的に検体を採取していく。採取した検体から(1)H-E染色および免疫染色による形態/蛋白発現を検討する、(2)RNAを抽出し、real-time PCR法、in situ hybridization法を用いて遺伝子発現を調べる。また、動物モデルを用いた研究として回腸間置動物モデルを作成し、それらに5% DSS溶液投与による腸炎を引き起こさせ、間置した回腸に炎症が誘発されるか否かを組織学的に検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験動物の購入、5%DSS溶液をはじめとする動物実験モデルに使用する試薬類、real-time PCR法、in situ hybridization法など遺伝子発現の研究に用いる試薬類・各種酵素類、免疫染色に用いる試薬類・各種抗体類、研究成果発表・情報収集のための学会参加費、その他実験器具など消耗品として使用する予定である。
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