研究課題/領域番号 |
23791514
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
水間 正道 東北大学, 大学病院, 助教 (80578675)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | Notch / 癌幹細胞様細胞 |
研究概要 |
本研究は癌幹細胞様細胞をターゲットにしたNotchシグナル阻害による胆道癌新規分子標的治療の確立を目的とするものである.癌幹細胞様細胞は癌微小環境の維持にも関わるといわれており,癌幹細胞様細胞をターゲットとするにあたり,Notchシグナルと癌微小環境の構成要素である癌間質細胞との関連を明らかにすることが必要である.また本研究の目指す新規治療の確立には胆道癌マウス異種移植モデルを用いた抗腫瘍効果の評価と腫瘍内の癌細胞と癌間質細胞の分子生物学的解析が必要であり,その解析には腫瘍を癌細胞と癌間質細胞に高精度に分離・回収し,各々別個にNotchシグナルに関しての解析が必要となる.しかし,腫瘍から癌細胞と癌間質細胞を互いに混入がなく質を保ちながら高精度に分離する方法は現在確立されていないため,本研究の第一段階として腫瘍から癌細胞と癌間質細胞を高精度に分離する方法を検討した.全身的なeGFPの恒常的発現により蛍光性を有する超免疫不全マウスであるNOG-EGFPマウスを異種移植モデルに用いた場合,その蛍光性が癌細胞と癌間質細胞の高精度な分離・回収を可能にすると仮説を立て,研究を行った.実際には,胆管癌細胞株TFK-1をNOG-EGFPマウスに異種移植して形成した腫瘍を回収し,コラゲナーゼで単細胞化した後に,eGFPの蛍光性でフローサイトメトリーでソートすると,癌細胞と癌間質細胞を高精度に分離回収することが確認された.回収した癌細胞の中の癌間質細胞の混入率を間質細胞の表面マーカーを用いてフローサイトメトリーで検討したところ0.4-1.7%であった.回収した癌細胞は細胞培養が可能で,マウス腫瘍形成能も保持されることを確認した.ソート後のサンプルはバイアビリティの劣化は少なく,後の分子細胞学的解析に用いることが可能と考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Notchシグナルの胆管癌への関与を明らかにすべく,当教室における約100症例の胆管癌切除標本を用いて,Notchシグナルに関与する各種因子の蛋白発現を組織マイクロアレイの受託実験にて検討することを計画したが,東日本大震災の影響や,受託実験の依頼先として検討していた施設と条件面が合わず,別施設への受託依頼を再検討する必要性が出てきたこともあり,当初の予定よりやや遅延が生じている.
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今後の研究の推進方策 |
組織マイクロアレイの受託先として検討している施設と本研究計画内容について綿密に協議し,本研究が円滑に遂行できるよう症例選定などの条件設定を進めていく.Notch阻害薬は数種存在するが,本研究計画策定時に薬剤の提供元に想定していたMerck社から薬剤提供が困難であるとの回答を受けたため,Notch阻害薬の入手可能な別会社を検討し,本研究を推進させていく.
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次年度の研究費の使用計画 |
胆道癌外科切除標本を用い、胆道癌におけるNotch ligand、Notch receptor、Notchシグナルの標的因子であるHes1、Hey1、HeyLの発現と予後や病期との相関を組織マイクロアレイにて検討することで,Notchシグナル系の胆道癌への関与を評価する. 胆道癌細胞株において,Notch signal阻害薬による足場非依存性増殖抑制効果を軟寒天コロニー形成試験で検討する。また,胆道癌細胞株において,Notch signal阻害薬による腫瘍形成能抑制効果をヌードマウスにて検討する。胆道癌細胞株においてNotch signal阻害薬によるSide Population細胞(SP細胞:癌幹細胞候補集団)数の変化をフローサイトメトリーで検討する。 以上の研究の遂行に使用する予定である.
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