研究概要 |
当初の予定では胆管癌切除標本のパラフィン包埋ブロックを用いて、委託実験で組織マイクロアレイにてNotchシグナル関連遺伝子を網羅的に解析する予定であったが、予定を変更し、NotchシグナルレセプターであるNotch1、Notch2、Notch3,Notch4、Notchシグナルの代表的surrogate markerであるHes1の発現を免疫染色にて検討することとし、平成25年度にこれらの免疫染色を施行した。2000年から2008年まで当科で切除された胆管癌117症例を対象とした。対照は、減黄処置や総胆管拡張のない膵神経内分泌腫瘍切除症例の正常総胆管5例とした。対照とした症例においては、Notch1-4、Hes1の発現をいずれも認めなかった。Notchシグナル関連因子の胆管癌における発現率は、Notch1が77.8%、Notch2が70.1%、Notch3が60.6%、Notch4が3.1%、Hes1が75.0%であった。Notch1-4、Hes1の発現の有無と予後や病理学的因子に有意な関係は認めなかった。Notch2,3では、肝門部領域の腫瘍が、遠位胆管の腫瘍と比べて、有意に陽性率が高かった(Notch2: 82.2% vs 50.0%,p<.001, Notch3:69.9% vs 45.5%, p=0.01)。以上より、Notch1、Notch2、Notch3 、Hes1が胆管癌に何らかのかたちで関与していることが明らかとなった。Notchシグナルが胆管癌にどのように関係しているかは、今後の検討課題である。
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