研究課題/領域番号 |
23791515
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岡田 恭穂 東北大学, 大学病院, 助教 (10375074)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 膵管癌 / 遺伝子不安定性 / 長期生存膵癌 |
研究概要 |
当該研究について東北大学倫理委員会に諮り、承認を得た。当科にて通常型膵癌と診断され、なおかつ根治切除を受けて病理学的にも膵癌と診断されたものを2010年12月を起点に遡って抽出した。これにより研究母集団を確保に努めた。この抽出した膵癌患者検体のうち、40例でマイクロサテライト解析に必要と思われる癌部分・健常(膵)組織部分を、パラフィン包埋組織を入手して薄切切片を作成した。癌細胞及び正常細胞それぞれの切片からDNA抽出キットを使用してDNAを抽出し精製した。過去の文献から推奨される解析のための5種類のマイクロサテライト領域(MSIマーカー:BAT25, BAT26, D17S250, D2S123, D5S346)プライマーを作成し上記で得られたDNAを鋳型としてPCR法で増幅した。それらをオートシークエンサーで解析し遺伝子配列の同定とピークパターンを比較してマイクロサテライト不安定性の陽陰性を判定した。判定基準は陽性マーカー数がMSS(MS stable)が0、MSI-L(MSI-Low)が1、MSI-H(MSI-High)が2以上、とした。結果は40例の解析で40例全てが安定(MSS)でありマイクロサテライト不安定性を示す例はこの中には存在しなかった。また当初の膵癌検体集積予定症例は合計100例であるため、逐次症例の集積も進めている。なお、本研究に該当した膵癌根治切除全症例は臨床検査・画像所見・病理所見・病期臨床病期ごと、及び病理学的所見ごとに分類し予後調査を行って臨床データとしての集積も同時に進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は倫理委員会に概要を提出して審査を行い、本研究について本学の倫理委員会に諮り通過した。その後2010年12月を起点として遡り通常型膵癌切除例を抽出した。本来であれば50例のMSI解析が初年度の目標であったが実際に癌部分と正常部分を集積できたたのは40例であった。40例の癌部分・正常部分をそれぞれパラフィン切片を薄切し、DNAを抽出して上記の5種類のマイクロサテライトマーカーに対してPCR法で増幅、正常部と癌部分でピークパターンを比較した。結果は40例中40例全てがマイクロサテライト不安定性を示さない判定(MS stable)であった。目標には届かなかったものの、マイクロサテライト解析はほぼ計画通り測定まで至ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の進展状況を踏まえて、今後は以下の研究を遂行していく計画である。(1)膵癌患者組織検体の集積、癌と正常部のDNA抽出とマイクロサテライト(MSI)解析は23年度と同様に継続施行する。(2)解析症例にMSI陽性膵癌が検出された場合、MSI陽性膵癌組織での免疫担当細胞の反応性、及びフレームシフト変異由来ペプチドに対する細胞障害性T細胞の誘導を試み、腫瘍免疫学的応答がMSI陽性膵癌の予後に関与するか、MSI陽性膵癌に対して免疫療法が可能か、について検討する。(3)膵癌組織に対するTILの評価:プレパラートを抗CD3マウスモノクローナル抗体で染色しT細胞の計測、MSI陽性膵癌群と同陰性膵癌群におけるT細胞浸潤レベルの差異を検証する。抗CD4, CD8抗体等での同様な染色も行いT細胞サブセットの動態も検討する。(4)MSI陽性・陰性膵癌患者から採取した末梢血単核球を分離し、患者樹状細胞のFACS解析による表面抗原の同定を行う。(5)コンピュータソフトによるフレームシフト変異由来エピトープペプチドの予測と合成:MSI陽性癌で多い塩基繰り返し配列(にて人為的に1塩基あるいは2塩基フレームシフト変異(挿入・欠失の両方)させたHLA-A2, A24に特異的なコンセンサス配列をコンピュータにて予測する(6)細胞障害性T細胞(Cytotoxic T lymphocytes: CTL)の誘導:分離PBMC を上記合成フレームシフト変異由来合成ペプチドで刺激後,IL-7存在下で培養しresponder 細胞とする。同様にペプチド刺激した自己PBMC に放射線照射を行いこれをstimulator 細胞とする。共培養してCTLを誘導する。CTLの腫瘍細胞に対する細胞障害活性解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は23年度に引き続いて膵癌切除患者組織検体の集積及びDNAの抽出からマイクロサテライト解析を主軸に行う。検査60例を行い、合計100例とするのが目標である。申請書で述べたとおり実験に必要な備品は既に整っているので、本研究においては主に消耗品のみを申請する。実際に研究費から使用予定のものはDNA抽出キット、シークエンス用試薬、培養用プラスチック製品、メチレーション解析試薬等と考えられる。また、論文作成の際の校正や別刷りの費用も必要になる可能性がある。
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