本研究の目的は、超音波エラストグラフィー(RTE)を用いた肝疾患の診断技術を開発、発展させ、迅速かつ非侵襲的な肝腫瘍の存在診断、質的診断(細目①)はもとより、従来肝生検でのみ診断可能であった慢性肝炎進行度、肝硬変の有無の診断への応用(②)、肝移植後グラフトの拒絶診断へ応用(③)を試みる。さらに、触診が不可能な腹腔鏡下肝切除術での”疑似触診”としての診断技術の発案(④)であった。 ①については、2013.3月時点で、症例登録200例のデータを基に、英語論文を執筆し現在投稿前である。先行して、2つの国際学会、1つの国内学会で発表を行った。②については、2013.3月時点で、160例の症例登録が終了し、現在画像および切除標本の病理所見の解析中である。H24年度中に英語論文化、合わせて学会発表も行う予定である。③については、実験計画検討・修正中である。④については、PariのInstitut Mutualiste Montsouris病院・Gayet教授の元で、昨年5月に約2週間の腹腔鏡下術中超音波術の研修を受けたのち、腹腔鏡下エラストグラフィプローベを用いた腹腔鏡診断症例を15例・20病変まで登録中である。①で得られた、エラストグラフィによる腫瘤の質的診断カテゴリを用いて、④における腹腔鏡下エラストグラフィの診断能も評価する予定であるが、さらなる症例蓄積が必要である。 本研究の成果により、従来人の手によってなされ、主観的であった触診を、客観的かつ共有可能な情報に昇華し、触診不可能な状況でも「超音波による擬似触診」で代替することで、触診と同等以上の診断が実現しうる。②はまだデータ解析の段階であるが、肝の線維化診断がエラストグラフィで可能となれば、侵襲的かつ苦痛を伴い、コストも高い肝生検をエラストグラフィで代替できるようになる。
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