研究課題/領域番号 |
23791523
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
吉山 繁幸 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), リサーチアソシエイト (60444436)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | クローン病 / Surgical Site Infection / Neutrophil |
研究概要 |
これまでに我々は、術後感染症を合併症した潰瘍性大腸炎患者では、術後末梢血中に異常に活性化された顆粒球が多く存在し、それを白血球除去カラムで除去することで異常な炎症反応を制御し、術後感染性合併症の発生率を50%から10%以下へと低下させることに成功した(J Gastroenterol. 2008, Surg Today. 2011)。その結果、抗生剤使用量を抑制し早期退院も可能にし医療費を大幅に低下させることが可能となった。本研究は、クローン病患者において術後に白血球除去カラムを用い、異常に活性化された好中球を除去することで、同様の結果が得られるかどうかを検討することである平成23年度は、これまでに集積したクローン病患者周術期血液、術前、術後の好中球を用い、E. coli、LPS刺激下の好中球機能(phagocytosis rate, apoptosis/necrosis rate etc)や炎症性、抗炎症性サイトカイン発現を検討し、さらに適応症例の集積をおこなった。クローン病患者の術前好中球は、E. coli貪食後viable な状態が維持され、その後の細胞死ではapoptosis優位の細胞死からnecrosis優位となることが示唆された。また、E. coli、LPS刺激でIL-8などの炎症性サイトカイン産生能が亢進するが、IL-1Raなどの抗炎症性サイトカイン産生能には影響を及ぼさないことが示唆された。今後、クローン病患者の術前、術後好中球の比較に加え、適応症例集積にも依存するが、白血球除去カラム前後の好中球の比較を行い、臨床的因子(血液学的炎症反応、術後感染性合併症、術後退院までの日数、栄養状態、など)の関連を検討し、研究を鋭意進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
術後白血球除去カラムを使用するかどうかは患者の同意に基づくため、適応症例集積が研究進捗に大きく影響する。手術前後の好中球の検討は当科のクローン病手術症例数からみて、ある程度の成果が期待できると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
クローン病患者にこれまでの当科のデータを示しながら、術後白血球除去カラム使用の有用性を丁寧に説明し、同意を得るように努力する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度の研究進捗状況に関連した未使用研究費が止む無く生じたが、平成24年度分と合算し十分検討したうえで使用していく予定である。平成24年度は、クローン病患者の術前、術後好中球の比較に加え、適応症例集積にも依存するが、白血球除去カラム前後の好中球の比較を行い、臨床的因子(血液学的炎症反応、術後感染性合併症、術後退院までの日数、栄養状態、など)の関連を検討していく。クローン病患者より採取した末梢血から好中球を分離する。A: 手術群の術前と術後、B: 手術+白血球除去カラム群の術前、術後白血球除去カラム使用前、白血球除去カラム使用後の好中球においてE. coli (ATCC25922)、LPS (serotype 0128:B12)刺激下の好中球機能(phagocytosis rate, apoptosis/necrosis rate etc)をFACS解析する。また、培養上清中の炎症性、抗炎症性サイトカイン発現をELISAにて測定する。A群、B群の臨床的因子(血液学的炎症反応、術後感染性合併症、術後退院までの日数、栄養状態、など)とin vitroで得られたデータとを解析し、クローン病患者における術後白血球除去カラムの使用の有用性を検討する。上記研究関連試薬、キットの購入費として研究費を使用する。
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