研究課題
炎症性腸疾患である潰瘍性大腸炎とクローン病は、背景に潜在的、持続的、慢性炎症があることから病変部位である消化管局所のみならず全身性にも免疫細胞が常に活性化されていると考えられる。我々は潰瘍性大腸炎患者の末梢血好中球が健常人よりnecrosisをきたしやすい状況であること、さらに、大腸全摘後の潰瘍性大腸炎患者の末梢血好中球も同様であることを報告した。前者は持続慢性炎症、後者は持続慢性炎症に手術侵襲が加わった状況で好中球がprematureで生体にとって有害な細胞死であるnecrosisをきたしやすいことを示した。さらに潰瘍性大腸炎患者に対する白血球除去カラムの使用は、骨髄からの新たな好中球動員を促進するため、末梢血好中球はnecrosisをきたしやすい状況から離脱することが分かった。炎症性腸疾患であるクローン病も術後感染性合併症率は高く、その制御が喫緊の課題である。好中球除去カラムがクローン病患者においても感染性合併症制御に有用かどうかを検討することが本研究の目的である。クローン病患者も潰瘍性大腸炎患者同様、末梢血好中球はnecrosisをきたしやすい状況であった。クローン病患者の適格症例が少なく、潰瘍性大腸炎での検討であるが、cDNA microarray data上、慢性持続炎症を背景にもつnecrosisをきたしやすい好中球は健常人と比べ、OPA1、SH3GLB1、BCL2A、BNIP2、BIRC1などのapoptosisを制御するまたは抑制する遺伝子発現が高かった。Real-time PCRによるvalidationも同様であった。今後、持続慢性炎症や高度手術侵襲による好中球機能不全状態のメカニズムの解明と白血球除去カラムによる末梢血中機能不全好中球の除去及び新たな好中球動員の促進が炎症性腸疾患の術後感染性合併症にどのような影響を及ぼすかを検討していく必要がある。
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Pediatr Int.
巻: 54 ページ: 806-809
doi: 10.1111/j.1442-200X.2012.03661.x.