京都大学消化管外科にて胃癌に対し手術を施行した患者より採取した血清を用いて、東レ株式会社との共同研究により開発したELISA法によるCFL1の高精度測定系を用いて血清CFL1の測定を施行した。胃癌患者における血清CFL1値は有意に非担癌患者コントロールに比し有意な上昇を認めたが、深達度や組織型、病期などの臨床病理学的因子との相関は見られなかった。 免疫組織染色による検討では、正常胃における再生胃粘膜や平滑筋などでも染色が見られた。胃癌切除標本におけるCFL1タンパクの発現に関しては、胃癌治癒切除症例78例にてCFL1発現の検討を行った。いずれの標本においても、癌部は抗CFL1抗体による染色が見られ、その染色強度により1+、2+、3+の3群に分類して詳細な臨床病理学的検討を行った。しかし、年齢や性別、深達度や組織型、病期、脈管侵襲やLauren分類、MUC発現・HER2発現などの臨床病理学的因子との有意な相関はなく、全生存率や無再発生存率との相関も見られなかった。 胃癌組織の染色強度と血中のCFL1値との相関についても検討を行ったが有意な相関は見られず、胃癌患者血清中でのCFL1値の上昇に寄与する機序については現時点で明らかでなく今後のさらなる検討を要すると考えられた。
|