研究概要 |
アポトーシス誘導性タンパク質であるBH3-onlyサブファミリーの活性を模倣した小型の阻害剤分子(Small molecule inhibitor)による、Bcl-2関連タンパクを標的とした、食道癌に対する新たな分子標的治療の開発を目的とする.近年このSmall molecule inhibitorと化学療法や放射線療法との併用効果が一部の癌腫で示された.そこで我々は食道癌においてSmall molecule inhibitorを用いBcl-2・Bcl-kLを標的として抑制することにより、BaxやBakを活性化させ、化学放射線療法の感受性を増強しうる可能性に着目した.食道癌細胞(TE cell line)でのアポトーシス関連タンパクであるBcl-2, Bcl-xL, Mcl-1, Bcl-w, Bax, Bak, IAPs, BFL-1の発現をWestern blot法を用い確認.細胞株の中で特に食道癌における化学放射線療法の感受性が報告されているBcl-2/xLおよびBaxの高発現細胞株および低発現細胞株の4種を選んだ. Small molecule inhibitorとしてABT-737を用い食道癌細胞株に食道癌における標準化学放射線療法で用いられるCDDPおよび5-FUと併用することによりclonogenic assayによる抗癌剤感受性増強効果を確認中である。同時にWestern blot法によるCleaved Caspase-3やCleaved PARPの発現、およびFlow cytometryによるAnnexin V/FITC apoptosis kitを用いた解析によりアポトーシスの増強を確認している途中である.
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今後の研究の推進方策 |
今年になって頭頸部扁平上皮癌においてAT-101とタキサン系抗癌剤の併用効果が報告されておりABT-737に加えAT-101もSmall molecule inhibitorとして用いていくこととした.食道癌細胞株にABT-737もしくはAT-101を加えたうえで放射線を0,5,20Gy照射しclonogenic assayによる放射線感受性増強効果を確認する。続いてABT-737もしくはAT-101にCDDP, 5-FU, 放射線照射(0,2,4,6Gy)に併用し同様に化学放射線療法の感受性増強効果を確認する.また同時にWestern blot法によるCleaved Caspase-3やCleaved PARPの発現、およびFlow cytometryによるAnnexin V/FITC apoptosis kitを用いた解析によりアポトーシスの増強を確認する.ヌードマウスを用い食道癌細胞株を皮下に移植し、(1)対照群 (2)small molecule inhibitor単独投与群 (3)CDDP,5-FU投与群(4)CDDP,5-FUおよびsmall molecule inhibitor投与群 (5)放射線単独照射群(6)CDDP,5-FU,small molecule inhibitor投与および放射線照射群 以上計6群をtumor volumeを測定することによりin vivoにおける抗腫瘍効果を測定する.皮下に移植し化学放射線療法をおこなった腫瘍を摘出しBcl-2, Bcl-xL, Mcl-1, Bcl-w, Bax, Bak, IAPs, BFL-1およびcaspase-3・9の免疫染色をおこない、腫瘍内におけるアポトーシスや関連タンパクの発現を測定することにより抗腫瘍効果の理論的背景を検討・考察する.
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