研究課題/領域番号 |
23791542
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
宮坂 義浩 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 共同研究員 (40507795)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 膵癌 / 間葉系幹細胞 / セネセンス / desmoplasia |
研究概要 |
膵臓癌は間質細胞の増生が特徴的であり、近年間質細胞が膵臓癌の悪性度を高めているという報告がある。これまで腫瘍細胞自体に関する研究が主に進められてきたが、新たな治療戦略開発を目的して間質細胞に着目した、本研究ではセネセンスという非可逆的分裂停止現象に着目している。膵癌間質細胞ではセネセンスに陥った細胞は極めて稀であり結果としてdesmoplasiaという過剰間質増生が誘導され、結果として抗癌剤が腫瘍に到達しにくい原因となり抗癌剤耐性を生じている可能性がある。本研究は膵癌間質細胞におけるセネセンス制御を解明する事により新しい膵癌治療戦略を目的とした研究を立案した。1 膵星細胞のセネセンス誘導と新規特異的表面抗原の同定 膵癌患者より得られる手術切除標本を用いて、ヒト膵星細胞株を20株以上作成した。作成された細胞株は、膵星細胞の特徴とされるMyofibroblast様の形態を呈し、α-SMAが陽性であることを確認した。さらに星細胞が放射線治療によりセネセンス関連Βガラクトシダーゼを発現している事を確認した。また、特発性肺線維症に用いられるピルフェニドン、骨転移治療薬であるゾメタの2剤が濃度依存性に膵星細胞の増殖を抑制することを確認した。また、癌間質相互作用に関与するTGF-β1、FGFなどの増殖因子やdesmoplasiaの構成器質であるコラーゲンIやフィブロネクチンの発現を抑制し、desmoplasia抑制作用を持つことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膵星細胞の作成に成功しており、これを基にin vitro研究が容易となり順調に計画を遂行していると言える、また、申請書の計画通りピリフェニドン、ゾメタなどの薬剤による星細胞への影響も確認しており、順調に計画が遂行されていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)間葉系星細胞純化セネセンス誘導星細胞特異的表面抗原の同定を手術組織標本、樹立した星細胞で行い、これを基にセルソーターによるセネセンス誘導星細胞の純化を進めていく(2)セネセンス誘導間質細胞-間葉系幹細胞相互作用とdesmoplasia、EMT、治療抵抗性の関連の解明(3)間葉系幹細胞を標的とした治療法および癌細胞ニッチ相互作用を標的とした治療法の開発
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次年度の研究費の使用計画 |
1. セネセンス誘導間質細胞-間葉系幹細胞相互作用とdesmoplasia・EMT・治療抵抗性の関連の解明 膵癌においてdesmoplasia は特筆すべき病理組織学的特徴であり、膵癌の浸潤・転移・予後に強く影響する。また、EMT に基づく転移や浸潤は固形癌に特異で、特に膵癌では予後を決定する。具体的にはセネセンス誘導星細胞や上記のセネセンス・間葉系幹細胞表面マーカーで初代培養星細胞あるいは切除組織から純化した間質細胞を用いて、in vitro、in vivo で間質増生や基質・増殖因子合成能、抗癌剤や放射線への感受性の評価を行い、さらに固形癌特有である浸潤・転移能やEMT へ間葉系幹細胞が与える影響を検討し、またこれらの能力に関連する分子発現を検討する。直接共培養状態やマウス共移植モデルで形成した腫瘍・転移腫瘍から癌細胞や間葉系幹細胞を分取し、遺伝子・蛋白発現の解析も行う。-多方面からの検討-更に、近年、右図のように新規免疫不全マウスに手術的に切除された膵腫瘍組織を移植し、癌細胞とその周囲の間質細胞が共存したモデルの作成に成功している。このモデルを用いても癌細胞だけでなく癌細胞を支持している周囲のニッチ細胞までを含めて再現・解析していく。2. 間葉系幹細胞を標的とした治療法及び癌細胞ニッチ相互作用を標的とした治療法の開発マイクロアレイによる網羅的な解析から間葉系幹細胞に特異的に発現する分子を同定し、レトロウイルスに組み込むshRNA を作成する。このshRNA の導入により治療実験をin vitro、in vivo において行う。さらに、癌細胞ニッチ相互作用に関わる分子を標的とした治療実験を共培養、共移植を用いて行う。
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