Trefoil factor 1 (TFF1)は、胃癌において癌抑制遺伝子と考えらているがそれを示唆するような臨床データは皆無である。今回、胃癌切除症例182例を用いて免疫組織染色でTFF1発現を評価し、臨床病理学的因子および予後との関連について検討を行った。さらにその発現制御に関してはDNAメチル化に注目し、バイサルファイトシーケンス法でメチル化の程度と発現の相関について検討した。その結果、TFF1低発現例は高発現例と比較して、有意に深達度が高く予後不良であり、多変量解析においては独立した予後規定因子であった。In vitro実験においても、TFF1のノックダウンにより浸潤能の亢進を認めた。また、細胞株・切除組織の双方において、プロモーター領域のメチル化はTFF1の発現と逆相関しており、TFF1がメチル化によってサイレンシングされていることが示唆された。今後は、TFF1低発現(高メチル化)症例を対象としたTFF1組み換え蛋白による胃癌の新規治療法・予防法の開発が期待される。
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