研究課題/領域番号 |
23791550
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
岩槻 政晃 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 助教 (50452777)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 胃癌 / 腹膜播種 / microRNA |
研究概要 |
本研究では非侵襲的である末梢血を用いて新規の腹膜播種診断マーカーや腹膜播種の治療標的としての臨床応用を目的とした。まず、既にストックのある食道癌血清サンプルを用いて、食道癌症例と非担癌症例での血清中のmiR-21の発現を検証した。血清中miR-21は食道癌症例で有意に上昇していた。術前、術後を同一症例で比較すると、血清中のmiR-21の発現は術後に有意に低下していた。また、化学療法が奏効した症例ではmiR-21の発現は低下していた。よって血清中のmiRの測定は可能であり、その発現は悪性度や治療効果を判定するツールになり得ることを示した。また、胃癌における化学療法耐性や腹膜播種を規定するmiR-gene pathwayの同定を行うに当たり、上皮間葉系移行 (Epithelial-Mesenchymal Transition: EMT)に着目した。miR-200 familyがZEB遺伝子を標的とし、EMTを来たしうることを切除検体と胃癌細胞株を用いて示した。今後は、血清中の発現を確認し、化学療法の耐性や腹膜播種との関与の検討を行う予定である。近年、血清中のexosomeが細胞間の情報伝達に重要な役割を担っていることが示され、exsome中のmiRの発現に着目し、exsomeからのmiRの抽出とその発現解析を現在行っている。実際、細胞間情報伝達に関わっているexsome中のmiRの発現を解析することで、マーカーや治療標的になりうるかを解析中である。 当該年度は、食道癌、胃癌において方法論の確立やあらたなcandidate miR, geneを同定した。今後は新規のmiR- gene pathwayの同定により、既存の腫瘍マーカーや画像診断を凌駕する腹膜播種診断マーカーとして、さらにはこれらを抑制することにより腹膜播種に対する新たな創薬も期待できる点で意義深いと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
血清サンプルの集積がやや遅れており、microRNA microarrayが施行できていない状況である。しかし、既存のサンプルを用いて、方法論の確立を行い、既知のmicroRNAや遺伝子で解析をすすめることができた。また、最近のトピックであるexsomeに着目し、当初の予定であった血清中のmicroRNAだけではなく、exosome中のmicroRNAの測定を確立でき、研究の幅は広がったと思われる。今後は症例の集積を継続し、新規のmicroRNA-gene pathwayを同定したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
症例の集積に鋭意務める。microarray解析は新規のmiR-gene pathwayの同定のためには必須であると思われるため、サンプルの集積状況をみて、場合によっては症例数を減らして、対応したいと考えている。microarrayの解析結果をもとにして、該当年度に確立した方法論で可及的速やかに機能解析、臨床検体でのvalidationを行いたいと考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度はmicroarray解析が中心になると思われるため、研究費の多くはmicroarrayに使用すると思われる。また、機能解析に用いる試薬、臨床検体でのvalidation(RT-PCRや免疫染色)に使用する予定である。
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