昨年度の研究結果を受けて、血清中exosomeからExoQuick Exosome Precipitation Solutionを使用し、更に抽出したexosomeからmirVana microRNA isolation kit(R)を用いてmicroRNAを抽出した。血清から抽出したexosomeの電子顕微鏡像を撮影しexosomeが直径30-50nmの楕円形の小嚢胞として確認できた。またexosomeの表面抗体である抗CD63抗体を用いてwestern blottingを行うと、濃度依存性にバンドが確認でき、血清中のexosomeを確実に抽出できることを確認した。次に、食道扁平上皮癌と診断された治療前の28例、及び同時期の炎症を伴わない非担癌症例22例を対象とし治療前の血清から抽出したexosomeが内包するmiR-21の発現が非担癌症例と比べ高いことを示した。以上より、食道癌症例において血清から抽出したexosomeが内包するmiR-21の発現がbiomarkerになり得ることが示唆された(Cancer 2013)。 更に、食道癌転移を規定する新規exsome中miRの同定のため食道癌転移陽性例と陰性例のmicroRNA microarrayを行い、転移を規定する新規microRNA(miR-205)をpick upし、臨床検体におけるその発現の妥当性と機能の解析を行うと同時に化学療法耐性遺伝子としてRPN2遺伝子に着目し、docetaxel耐性に関与することを示した(Br J Cancer 2012)。 現在、胃癌における化学療法耐性因子として新たなmiR-gene pathwayの同定を行っており、これらの研究は難治性の高い上部消化管癌において非侵襲的に測定可能な治療効果の反映や予後予測を反映する新たなbiomarkerとして臨床応用が期待できる。
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