研究目的のうちin vitroにおける、「食道扁平上皮癌細胞株のp-mTORレベルを測定した後に低発現株と高発現株に分類し、mTOR阻害剤処理により細胞浸潤能(invasion assay)、増殖能(proliferation assay)、抗アポトーシス作用(flow cytometory)、抗癌剤感受性などにおいて、両株に差があるかを検討する。」は概ね予定通り進行しており、高発現株(TE4)と低発現株(TE11)においては両株に有意な差はなかったことが確認できた。しかし、mTOR阻害剤処理において、p-mTORが発現していることが重要であることが確認できた。in vivoでは「食道扁平上皮癌モデルマウスを作製し、mTOR阻害剤投与による抗腫瘍効果を検討する。腫瘍におけるmTOR signalingの変化を解析し、さらに放射線増強作用、抗癌剤感受性増強作用の有無についても検討を行う。」に関しては、mTOR阻害剤投与により抗腫瘍効果が確認できた。またcisplatinの感受性増強作用も確認できている。しかし、放射線増感作用に関してはまだ研究進行段階である。 前回の続報がpublishされたため、概ね研究計画は遂行出来たと考える。「食道扁平上皮癌250例以上」の免疫染色のうち、170例ほどで予後との関連を検討し、p-mTOR陽性例は有意に予後不良であることが確認された。長期予後を検討するため、データベースをアップデートしつつ症例数増加を検討したい。
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