研究課題/領域番号 |
23791552
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
高橋 伸育 宮崎大学, 医学部, 助教 (20404436)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | DKK-1 |
研究概要 |
はじめに、膵癌で発現するWnt抑制蛋白の一つであるDKK-1を臨床応用するための試みとして、ERCPにおける擦過細胞診で得られたサンプルをもとに、DKK-1の発現解析を行った。しかし、採取した膵液中からRNAを抽出できず、発現解析には至らなかった。これは膵液中の酵素作用、もしくは採取した膵液中に含まれる膵癌細胞の絶対量が不足したことに起因すると推測された。また、膵癌患者サンプルの血中DKK-1量をELISA法により測定したが、RNAの発現上昇と比較して有意な血中蛋白濃度の上昇は認められなかった。 この結果を受けて次に、発生を同じくする胆道系腫瘍について、そのDKK-1発現を解析した。方法として、当大学附属病院とその関連施設で切除された胆道系腫瘍30例について、腫瘍部分とその近傍の正常部組織からRNAを抽出し、逆転写反応を用いてcDNAを作成した。そのcDNAを用いてRT-PCRとReal-time RT-PCRを行い、発現量について比較した結果、胆道系腫瘍のうち胆管癌のみが腫瘍部で高発現していた。次に胆道系腫瘍細胞株を用いて発現を検索した結果、胆管癌に由来する細胞株の多くに発現が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は計画通り膵癌の臨床応用を目的として、ERCP検査時に採取される膵液からRNAを抽出し解析を行う予定であったが、思うようにRNAの抽出ができず、最終的に膵液を用いた実験に関して中止せざるを得なかった。しかし、胆管系腫瘍に焦点を当てて実験を行ったところ順調に実験結果が得られており、当初の実験の遅れを取り戻しつつあると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は結果が順調に出ている胆管系腫瘍に焦点を絞り実験を行っていく予定である。現在までに臨床サンプル、細胞株を用いた発現解析は終えているので、次は機能解析を行う予定である。まず、DKK-1の高発現がみられた胆管癌を由来とする細胞株にsiRNAを用いてDKK-1の発現抑制をかけ、それにより変化が出る古典的、非古典的Wntシグナル経路に関係する蛋白を同定する。可能であれば安定的にshRNAを発現する細胞株をレトロウイルスベクターを用いて作成する。安定的にDKK-1抑制株が得られた場合は、ヌードマウスの皮下に移植しin vivoの実験を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定した実験をはじめるにあたり、DKK-1の抑制株を作成することが最も重要なテーマであり、もっとも困難である。そこで研究費の使用計画として、効力のあるsiRNAを購入、選択し、実際に抑制をかけてみる。また、レトロウイルスを用いた安定的抑制株の樹立が困難であった場合、さらにレンチウイルスを購入して同様の実験を行う。そこで安定株が得られた場合はヌードマウスを購入してin vivoの実験を行う。
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