研究課題/領域番号 |
23791553
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
喜多 芳昭 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 特任助教 (30570692)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 微小環境 / 癌幹細胞 / マイクロアレイ / 細胞実験 |
研究概要 |
まず,Laser micro dissection法とoligomicroarrayを用いて,幹細胞ニッチに関わる遺伝子を抽出した(リンパ節周囲腫瘍細胞間質のmicroarrayは,十分なRNAが抽出できなかったため,腫瘍のarray dataに追加しバイオインフォマティクスツールであるIngenuity Pathway Analyisis(IPA)を用いて遺伝子の抽出を行った).これらの抽出同定した遺伝子群の中には,EMTと関連する遺伝子が含まれていた.近年,癌幹細胞(CEC)遺伝子発現解析を行うと,上皮-間質転換(EMT)を誘発した際に観察される遺伝子発現形式に酷似しており,さらに上皮系癌細胞においてEMTを人為的に誘導すると癌幹細胞様の形質を獲得することが判明し,CSCとEMTは密接な関係があるという結果が報告されている.本研究で抽出同定した遺伝子群の中にも,EMTと関連する遺伝子が含まれており,それらの遺伝子の機能解析を開始している.現在,手術切除組織の臨床検体による発現解析を終了し,細胞実験を開始している.また,抽出した遺伝子群には,糖代謝に関連する遺伝子も含まれていた. 近年,dormantな癌幹細胞が,抗癌剤や放射線に対して非常に高い抵抗性を有し,過酸化ストレスによるDNAダメージを回避する能力が高いことが報告されている.そこで癌幹細胞では嫌気性糖代謝が亢進していることから,糖代謝利用したPET検査の結果を用いることによって臨床的方面から解析を開始している.さらに関連して進めている研究として,我々が腫瘍転移関連遺伝子として同定したカルシウム調節ホルモンである糖蛋白Stanniocalcin 2の発現がEMTや癌幹細胞性と関連するかどうかを,食道癌細胞株にSTC2をトランスフェクトしたSTC2高発現細胞株を用いて解析を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りにマイクロアレイの結果から遺伝子群を抽出することは可能で目標を達成できたが,「実験動物を用いてリンパ節転移の抑制を確認し,創薬につなげる」という目標はまだ見えていない.
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今後の研究の推進方策 |
同定したリンパ節転移および幹細胞ニッチに関連する遺伝子を癌細胞株にtransfectさせて機能評価を行う.有望であればヌードマウスもしくはNOD/SCIDマウスの鼠径部に移植しリンパ節転移モデルを作成し,癌細胞皮下移植と同時にニッチ抑制中和抗体や阻害剤投与でリンパ節転移が抑制されるかどうかを検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
上記推進方策に関連する細胞実験関連費用(培養試薬,培地等),遺伝子導入実験に用いる試薬,発現解析に用いる試薬(プライマー,抗体,プラスミドベクター,RNAi等)実験動物(ヌードマウスもしくはNOD/SCIDマウス),中和抗体や阻害剤の購入費用として使用を計画している.
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