研究概要 |
細胞分離から構築された移植片を用いる細胞・組織移植において、高い細胞収量と分離過程の細胞障害回避の両立は重要な課題である。特に膵島移植の分野では、膵島分離過程の特殊性から、収量の不安定性と分離過程で被る顕著な細胞障害が、臨床展開において大きな障害となっている。今後の臨床膵島移植分野で使われるcollagenaseを用い、最も有効なproteaseの種類を明らかにし、その使用すべき最適なcollagenase/neutral protease unitの比を明らかにする。さらにClチャネル阻害による細胞防御原理を応用することにより膵島・外分泌細胞を細胞障害から予防し、機能の良好な膵島を高収率で確保できる分離法を確立し、膵島移植の成績向上を図ることを目的とした。平成23年度はラットを用いた基礎実験を施行した。膵島分離用酵素の最適化については、collagenaseをLiberase MTF(MTF, Roche社)、neutral proteaseをThermolysin (TH, Roche社) もしくはNeutral protease NB(NB, SERVA社)を用いた。結果、通常の組み合わせであるMTF+THより、MTF+NBの組み合わせが良好な結果をもたらしうる可能性が示唆された。Clイオン制御による膵島分離成績への影響と細胞保護効果については、膵島分離過程にClイオン阻害剤(DIDS,NPPB)の添加、Clイオンフリーとした細胞外溶液の使用を導入して、分離成績や細胞のViabilityへの影響を調べ、膵島分離収量やViabilityはClイオンの制御により改善されることが明らかとなった。また、この実験過程で、膵島分離が極めて強い小胞体ストレスをもたらすことが明らかとなり、Clイオン制御が小胞体ストレスへも影響を及ぼしうるかどうかの検討が必要と考えられた。
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