消化器癌領域において、sentinel node(SN)理論の検証が胃癌を中心に進められている。食道癌においてもsentinel node navigation surgery(SNNS)の臨床的意義の検証と日常臨床への応用が積極的になされていくと考えられる。また、近年免疫抑制活性を有するCD4+制御性T細胞(Treg)により自己免疫疾患が惹起されたり、抗腫瘍反応が抑制されることが報告されている。近年マウスモデルにおいて、CD4+CD25+Tregを除去するか、CD4+CD25+Tregの抑制を解除する可能性のある物質をアジュバントとして使用することにより、癌に対する免疫応答を増強し、癌を駆逐できること、またCD4+CD25+Tregによって認識される抗原を免疫することにより、癌に対する免疫応答を強く抑制し、化学発癌剤による発癌促進、マウス移植癌の増悪が起こることが報告され、Tregが腫瘍免疫応答を制御していることが強く示唆された。ヒトにおいても種々の癌患者で、末梢血および癌局所に浸潤しているCD4+CD25+Tregの割合が健常人に比較して増加していること、末梢血でのCD4+CD25+Treg数の増加、腫瘍局所でのCD8+T細胞/FOXP3+CD25+Treg比の低下は予後不良因子となりうることが報告され、Tregが腫瘍免疫応答を制御していることが示されてきた。センチネルリンパ節を含む食道癌所属リンパ節において抗Foxp3抗体、及び抗CD83抗体陽性細胞の測定により、食道癌担癌状態における制御性T細胞の動態を明らかにし、臨床病理学的検討と併せて、制御性T細胞抑制等による腫瘍免疫効果の賦活を期待する。
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