研究課題
平成23年度は、まずヒト食道癌細胞株におけるアクアポリン発現レベルの解析を試みた。種々のヒト食道癌細胞株におけるアクアポリン5の蛋白発現をウェスタンブロット法で解析したところ、TE2、TE5での高発現、KYSE70、KYSE170、TE9での低発現を確認した。また、アクアポリン5高発現食道癌細胞株であるTE5に、アクアポリン5-siRNAをトランスフェクションし、蛋白・遺伝子発現抑制効果をウェスタンブロット法・定量的RT-PCR法で確認した。さらに、アクアポリン5により制御される遺伝子を解明するため、アクアポリン5-siRNAをトランスフェクションしたTE5を用いてmicroarrayによる網羅的解析を試みている。一方で、ヒト食道癌組織におけるアクアポリン5発現レベルを解析した。手術臨床標本のパラフィンブロックを用い、アクアポリン5に対する免疫染色を行ったところ、食道癌組織におけるアクアポリン5の高発現を確認した。また、アクアポリン5の発現が、食道扁平上皮癌における組織学的分化度と相関することを見出した。さらに、種々の臨床病理学的因子や、予後・再発形式との相関を現在解析中である。同時に、低浸透圧細胞破壊療法の基礎的検討を進め、胃癌細胞株において、クロライド輸送体阻害により低浸透圧細胞破壊効果が増強されることを解明した(Blockade of Chloride Ion Transport Enhances the Cytocidal Effect of Hypotonic Solution in Gastric Cancer Cells. J Surg Res. 2011 Nov 21.)。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画のうち、ヒト食道癌細胞株におけるアクアポリン発現レベルの解析、ヒト食道癌組織におけるアクアポリン発現レベルの解析と臨床病理学的因子との相関性の検討は、ほぼ終了している。また、siRNAを用いたヒト食道癌細胞株のアクアポリン発現調節系も確立し、制御遺伝子のmicroarrayによる網羅的解析も進行しており、研究目的・研究計画はおおむね順調に進展していると考える。
今後、ヒト食道癌細胞株のアクアポリン発現調節(siRNA,発現ベクター)と低浸透圧刺激に対する反応性の細胞生理学的解析を進める。さらに、マウス胸膜転移モデルを用い、アクアポリン発現レベルによる低浸透圧細胞破壊療法の反応性を検討していく予定である。
次年度は、細胞培養関連(培地およびウシ胎児血清等)、分子生物学的、生化学的手法および細胞生理学的手法に用いる消耗品と、実験動物購入費用を中心に研究費を使用していく予定である。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (9件)
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