2011年度に高エネルギー加速器研究機構における放射光由来X線源と高感度HARP受像管(NHK放送技術研究所提供)を用いた高感度放射光微小血管撮影を肺動脈造影法に応用する技術を確立した。 2012年度以降には、高感度放射光微小血管撮影法により約100µmまでのラットの肺細動脈の造影が可能となったため、動静脈シャント増設により作成したラット高肺血流モデルを利用して右主肺動脈から胸膜下肺細動脈までの肺細動脈血流動画を得た。より詳細な肺動脈血流速度とshear stressの関連を調べるため、得られた肺動脈造影画像において、造影剤の濃度変化と通過時間からGray-val濃度変位測定ソフト(Library Inc. Japan) を用いて右下肺動脈の血流速度を算出した。その結果、高肺血流性肺高血圧症において右下肺動脈血流速度は有意に増加しており、よりshear stressのかかる状態である事が推察された。ラット心エコーVevo®2100 (VisualSonics Inc. Canada)により測定した主肺動脈流速も同様に、ラット肺高血流モデルにおいて有意に上昇していた。これらは高感度放射光微小血管撮影法による肺動脈流量解析の信頼性を高め、さらには心エコーで得られる中枢の流速よりもより末梢における流速の変化を感知できる可能性を示唆しているものと考えられた。 さらに2013年度には、炎症性の肺高血圧症であるモノクロタリン誘発肺高血圧症ラットを用いて肺細動脈造影を行うことにより、異なる機序の肺高血圧症における微小血流の変化を視覚化することを可能とした。 高感度放射光微小血管撮影法と肺動脈流量解析は、肺高血圧症における血管リモデリングの視覚化を可能とし、肺高血圧症における肺血流変化、shear stressと血管内皮細胞障害の相互関係の解明の一助になりうる有用な技術であると考えられた
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