研究課題/領域番号 |
23791562
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
早稲田 龍一 金沢大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20579651)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 肺癌 / 外科 / 内視鏡手術 / 光線力学診断 |
研究概要 |
肺区域切除を行う際には正確な肺区域同定は必要である。本研究の目的は、新しい肺区域同定法としてビタミン B2 による光線力学診断(Photodynamic diagnosis;PDD)を利用した方法を確立し、有用性を検証することである。本年度は、実施計画通りブタ心肺摘出ブロックを使用した肺区域切除モデルにおいてPDDによる肺区域切除手技を確立した。具体的にはまず肺区域切除モデルとして肺区域同定が容易(区域同定面が1面)な右前葉における区域切除と難易度の高い(区域同定面が2面以上)右後葉における区域切除を設定した。ついで、手技はモデルにおける区域気管支を同定した後、シリンジによる用手的な蛍光物質の注入を選択、蛍光物質の条件は本実験においてはビタミンB2の生理食塩水による50倍希釈液が適していることを確認した。上記、肺切除モデル・条件にて右前葉10例・右後葉10例の切除を施行した。評価は計画通り、(1)PDDによる肺区域描出能の肉眼的評価(A:明確、B:明確ではないが肺切除可能、C:不明確で切除不能)、(2)録画画像から蛍光部の光量および持続時間を評価、(3)同定された肺区域間の病理学的評価を行った。結果として検討(1)では右前葉切除においてA:9、B:1、C:0、右後葉切除においてA:7、B:3、C:0と良好な区域描出能で考えられた。検討(2)において蛍光部の平均輝度142±13(非蛍光部は50以下)と十分な光量が得られており、注入後1時間経過しても光量の減少は認めなかった。検討(3)では、PDDにより認識された区域間面をH-E染色、Azan染色にて評価、区域間面に弾性繊維を認め、正確な区域が描出されていると考えられた。以上の結果より肺切除モデルにおいては、本手技は確立できたと考え、現在次年度計画にあるブタ生体での評価を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H23年度に計画した内容、ブタ心肺ブロックを使用したPDDによる肺区域同定手技はほぼ確立し、良好な成績であった。現在、この結果からH24年度の計画通りブタ生体での本手技の確立および有用性・安全性の検証に取り掛かっている。
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今後の研究の推進方策 |
計画通り本年度に確立したPDDによる肺区域同定手技を利用し、麻酔動物(ブタ)の使用した生体における本手技の確立、有用性・安全性の評価を行う。成豚(体重30Kg程度、12頭)に対し、右前葉における区域同定・切除6例、右後葉における区域同定・切除6例を予定している。評価は本年度と同様、(1)PDDによる肺区域描出能の肉眼的評価(A:明確、B:明確ではないが肺切除可能、C:不明確で切除不能)、(2)録画画像から蛍光部の光量および持続時間を評価、(3)同定された肺区域間の病理学的評価を行う。また本年度までの成果の学会発表・論文発表を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の未使用額は、情報収集及び成果発表の為の旅費が予定していたより少なかった点、また消耗品である薬剤費用が予想より低くなった点が挙げられる。本年度と同様のPDD用内視鏡機材にかかる費用、次年度では新たに気管支鏡も併用するため同機材にかかる費用、ブタ生体を使用した手術実験となるためブタおよび必要な薬剤などにかかる費用など、次年度計画書に示した通りの使用予定である。また、成果の発表や情報の収集のための学会参加(国内・国際)が予定されており、こちらについても計画書に準じた使用予定である。
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