研究課題/領域番号 |
23791565
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
川口 晃司 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (10402611)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 悪性胸膜中皮腫 / 受容体チロシンキナーゼ / 細胞株樹立 / MET / 分子標的薬 |
研究概要 |
悪性胸膜中皮腫は予後不良の疾患であり、いまだ有効な治療法がない。われわれは、受容体型チロシンキナーゼ (RTK)に注目し、悪性胸膜中皮腫におけるRTKの発現・活性化を解明するとともに、RTK阻害剤の有効性について解析し、最終的には悪性胸膜中皮腫に対する分子標的治療の可能性について検討していきたいと考えている。これまで我々は中皮腫の細胞学的特性を明らかにするために患者検体より細胞株の樹立を行ってきた。ただし悪性胸膜中皮腫は患者数の増加が予測されているものの手術適応となる症例が少なく、また研究する施設も限られているのが現状である。当該年度には結局悪性胸膜中皮腫の手術は2症例しかなかった。それらの腫瘍検体および胸水から培養を試みたが細胞株樹立はできなかった。そのためこれまでの細胞株を用いてRTKの発現・活性化を解明していった。すると多くの細胞株においてMET、EGFR、VEGFR、PDGFR、FGFRなどが活性化していることを確認した。それらを単独で阻害してもあまり増殖抑制効果はみられなかったが、複数のRTKを同時に阻害すると腫瘍の相乗的な増殖抑制効果を認めた。今後の予定としては、まずどのような阻害剤の組み合わせが最も効果的なのかを検討したい。とりわけ複数のターゲットを阻害するという治療は、腎癌では始まりつつあるが、これから注目されていくものと考えられる。その次には、in vivoでの効果についても検討していく。以前にパイロット的に悪性胸膜中皮腫細胞株のマウス皮下移植実験を行っており、それを継承するとともに同所移植モデルも作成し、分子標的治療の可能性を追求していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
悪性胸膜中皮腫は患者数の増加が予測されているものの、手術適応となる症例が少なく、また研究する施設も限られているのが現状である。また 別に行う研究は特にないが、職務として呼吸器外科診療を行っていかなければならない。その中心はやはり肺癌に対する外科治療である。悪性胸膜中皮腫の治療機会は多くはないが、肺癌の検体や肺癌患者の情報は豊富にあり、悪性胸膜中皮腫と肺癌との細胞生物学的特性の比較や肺癌の分子標的治療についても発展していければと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者は平成21年3月まで在籍した愛知県がんセンター分子腫瘍学部で主に行っていたが、現在そちらには名古屋大学呼吸器外科より1名の大学院生が在籍しており、協力体制は整っている。また医局研究室にもクリーンベンチなどの実験装置が設置されているため、そちらでも細胞培養などを広げていきたいと考えている。研究代表者は外科学会、胸部外科学会、呼吸器外科学会、肺癌学会、内視鏡外科学会の会員であり、ほぼ毎年年次集会に参加・発表しているため、情報の収集や共有、また成果を社会に発信しやすいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究で計画した方法においては、新たに高額な実験設備を購入する予定は現在の所ない状況である。実際の経費は、研究における消耗品とソフト、実験助手に対する謝金、また研究成果の発表のための旅費や誌上掲載に関わる出費などである。
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