研究課題/領域番号 |
23791570
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
浅野 博昭 岡山大学, 大学病院, 助教 (70534775)
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キーワード | 胸膜悪性中皮腫 / マイクロRNA / 血清DNA |
研究概要 |
プロモーター領域のメチル化による遺伝子発現の抑制が癌化に関与することがよく知られている.我々は,悪性胸膜中皮腫でmiR-34b/cのプロモーター領域が高率にメチル化(約85%)していることを報告している.鋭敏なDigital PCR法を用いて,血清中の微量DNAからこのメチル化を検出できれば,悪性胸膜中皮腫の早期診断や病状の経過観察へ応用が期待できる. 初年度はQIAamp Circulating Nucletic Acid Kitを使用し,血清1mlから2-7ngのDNAを回収したが,平成24年度はより高率の良いEpitect Plus DNA Bisulfite Kitに変更し,血清1.5mlから2.5-5.0μgと血清DNAの回収量を増やすことができた.採取した血清DNAをBisulfite処理し,1検体40wellでCYBR Green法でDigital PCRを施行した. 現在,悪性胸膜中皮腫患者の血清30検体,良性石綿胸水患者の血清22検体,健常ボランティア血清10検体の解析が終了した.Melting curve法で比較すると,標的部位が完全メチル化した陽性コントロール(H290)ではmelting curveのピーク値(Tm値)は78.2℃,メチル化なしの検体では75.3℃であった.各wellにつき,陽性コントロールのTm値±2SDを陽性wellとし,40well中に陽性wellが3つ以上をDigital PCR陽性とした.悪性胸膜中皮腫患者は86.7%(26/30),石綿胸水患者は45.5%(10/22),健常者は10%(1/10)の陽性率であり,これらの群間に有意差を認めた.健常者からのスクリーニングではこの条件設定が最適と考えられる.また,石綿胸水患者の約45%でmiR-34b/cのメチル化が検出されており,発癌機序においても非常に興味深い結果である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
微量な血清DNAを用いた研究を行う場合に,まずは良質な血清DNAをできるだけ多く回収する必要がある.これは研究の根本に関わる重要なことであり,本年度は初年度の研究結果に満足することなく,血清DNAの回収法をさらに改善させた.また,Digital PCR結果の解析に関しては,今回は健常者からのスクリーニングという観点から最適な条件を設定することができた.これは,当初に立案した(1)血清より微量なDNAを採取でき,それをbisulfite処理し,(2)血清DNAからmiR-34b/cプロモーター領域のメチル化をDigital PCRで検出できるという当初の目標は達成できた.
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今後の研究の推進方策 |
現時点で,胸膜悪性中皮腫患者30例,良性石綿胸水患者22例,健常者10例の解析が終了した.悪性胸膜中皮腫群と健常者群では,明らかな有意差(p<0.0001)を認めており,これ以上の症例集積は必要ないと考えている。悪性胸膜中皮腫群と石綿胸水群でも有意差は認めているが(P=0.0015),石綿胸水患者の45.5%にメチル化陽性を検出している.これは発癌機序の観点からは非常に興味深いデータではあるが,悪性胸膜中皮腫患者をより特異的に検出する実験系の確立ためには,miR-34b/c以外にも有用と思われるメチル化マーカーを同定し,複数のメチル化マーカーを組み合わせた解析が必要と思われる.平成23-24年の結果をふまえて,動物実験を改めて行う意義は少なくなっており,平成25年度はメチル化アレイなどと用いて,miR-34b/cと組み合わせ可能な新規のバイオマーカーを探すことに主眼を置く予定である.平成25年度は最終年になるので,本研究の学会発表,論文化も行なう予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は,DNA採取キット,リアルタイムPCR用試薬,プレート,細胞培養試薬,メチル化アレイ代など1000千円を使用する見込みである.また,論文作成費用,学会発表の交通費,宿泊費として300千円を使用する見込みである.
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