研究課題
最終年度は、平成23年度、24年度で検討した最適な方法を用いて血清から遊離DNAを回収し,Bisulfite処理を行った。患者血清中に存在する胸膜悪性中皮腫由来の微量な遊離DNAの中のmiR-34b/cメチル化を標的にして、 1検体40wellでデジタルPCRを行い、PCR産物をCYBR Green法で検出した。標的部位がほぼ完全にメチル化した胸膜悪性中皮腫細胞株(H290)を陽性コントロール、メチル化のほとんどない腹膜中皮細胞株(LP9)を陰性コントロールとして測定系の最適化を行った。最終年度は検体数を増やして胸膜悪性中皮腫患者(MPM)の血清48検体、良性石綿胸水患者(BAP)の血清21検体、健常ボランティア(HV)血清41検体で解析を行った。この3群で陽性well数を比較したところ、MPM群では陽性well数がBAP群、HV群より有意に多かった(それぞれp=0.03、p<0.01)。ROC曲線を用いて最適なカットオフ値を求めたところ、40well中に陽性wellが3つ以上の検体をデジタルPCR陽性とすると感度は67%、特異度は77%であった。以上より、まず計画通りに胸膜悪性中皮腫患者の血清からmiR-34b/cのメチル化を検出できたこと、またメチル化はMPM群で有意に多かったことが証明できた。特異度77%、感度68%はまずまずの検出能力を持つ測定系であるが、臨床応用のためには他のバイオマーカーを加えるなどして感度と特異度をさらに向上させる必要があると思われる。また、BAP群でmiR-34b/cのメチル化が検出されており、胸膜悪性中皮腫の発癌機序においても分子腫瘍学的に非常に興味深い結果であった。まれな疾患である胸膜悪性中皮腫で48検体の血清を調べたこと、また胸膜悪性中皮腫の予備群としての良性石綿胸水患者の血清を同時に測定できたことは非常に貴重であると思われる。
すべて 2013
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Lung Cancer
巻: 82(3) ページ: 485-490
10.1016/j.lungcan.2013.09.017.Epub 2013 Oct 10.