研究課題
本研究では、IL-17がどのような分子機構で移植片の拒絶応答の際、急性期炎症を誘導し、拒絶を促進するのか、分子・細胞・個体レベルでの解析で明らかにすることを目的とした。本研究の具体的な達成目標は以下の2点である(1)移植心の急性期拒絶応答におけるIL-17およびIL-17Fの役割の解明(2)移植心の急性期拒絶応答におけるIL-17およびIL-17F産生細胞の同定。これまでに得られた(1)に関しての研究成果を報告する。急性拒絶時の移植心における遺伝子発現と浸潤細胞の経時的変化を検討した。IL-6、IL-17およびIL-23のmRNA発現の増加は、術後 1 日目よりみられ、術後3日目には、IFN、IL-4、TNFの mRNA の発現も有意に増加した。IFN、TNFおよびIL-6 のmRNA は、術後 7日目でもっとも高値となった。移植心の急性拒絶反応におけるIL-17の関与の検討では、野生型マウスとIL-17欠損マウスの2群間で比較検討した。移植心の生着率は、野生型マウス群に対しIL-17欠損マウス群で有意な延長を認めた。術後7日目の移植片局所の病理像では、IL-17欠損マウス群で顕著に浸潤細胞の抑制を認め、浸潤細胞中のCD4陽性細胞、CD8陽性細胞、および、CD11b陽性細胞などの細胞数はIL-17欠損マウス群で有意に減少していた。炎症細胞の浸潤低下に相関して、移植心の組織抽出液中における炎症誘導性サイトカインやケモカイン量が、IL-17欠損マウス群では有意に低値を示した。ここまでに得られた結果より、急性拒絶応答時の移植心局所において、IL-17 の発現増強が認められた。移植後、早期に発現するIL-17が、移植片内においてその後に発現が強く誘導される炎症誘導性サイトカインを誘導することにより、炎症細胞の浸潤を促進し、急性拒絶応答を促進していることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本研究は、2カ年計画で行う予定である。本研究の具体的な達成目標は以下の2点である。(1)移植心の急性期拒絶応答におけるIL-17およびIL-17Fの役割の解明(2)移植心の急性期拒絶応答におけるIL-17およびIL-17F産生細胞の同定。23年度より現在まで(1)を行い、研究成果が得られ、24年度より(2)を行う予定である。
現在、研究計画・方法で示した「移植心の急性期拒絶応答におけるIL-17およびIL-17F産生細胞の同定」の研究を行い、移植片拒絶応答におけるIL-17の機能解析を分子・細胞・個体レベルでの解析で明らかにする。得られた成果は、早急に学術誌への発表を行う。
上記研究を行う。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Circulation
巻: 124 ページ: S187-96
Journal of Heart and Lung Transplantation
巻: 30 ページ: 1409-17