研究課題
本研究では、IL-17がどのような分子機構で移植片の拒絶応答の際、急性期炎症を誘導し、拒絶を促進するのか、分子・細胞・個体レベルでの解析で明らかにすることを目的とした。本研究の達成目標は以下の2点で(1)移植心の急性期拒絶応答におけるIL-17の役割の解明(2)移植心の急性期拒絶応答におけるIL-17産生細胞の同定であり23年度・24年度にそれぞれ明らかにした。平成25年度は以下の実験を計画した。①γδT細胞欠損マウスにおける移植心の急性拒絶反応の抑制。②急性拒絶における移植心の生着率延長における制御性T細胞の関与。①の結果:γδT細胞欠損マウスをレシピエントとして移植心の生着率を比較検討した。野生型マウス群と比較しγδT細胞欠損マウス群では、移植心の生着率の延長を認めた。またIL-17欠損マウス群と比較した場合ではγδT細胞欠損マウス群との間に有意な差を認められなかった。これらの結果より、移植心の急性拒絶反応においてCD4陽性T細胞およびCD8陽性T細胞由来のIL-17よりもγδT細胞から産生されるIL-17が重要であることが示唆された。②の結果:IL-17欠損マウス群の生着率が延長した移植心を摘出し浸潤細胞と制御性T細胞の含有率をフローサイトメトリーで解析した結果、制御性T細胞の増加を認め、IL-6の産生が減少していた。抗CD25抗体を投与して、制御性T細胞を除去したIL-17欠損マウスとIL-17欠損マウスを移植心の生着率を比較した。抗CD25抗体投与群では移植片の生着率の悪化が認められた。以上より、IL-17欠損マウスにおける移植心の生着率の延長に制御性T細胞が重要であることが明らかになった。IL-17は、IL-6産生を促進することにより、制御性T細胞の分化を抑制し、移植片の拒絶を促進する炎症誘導性サイトカインであることが明確になった点で、今回の発見の意義は大きい。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
Am J Cardiol
巻: 113(4) ページ: 724-730
10.1016/j.amjcard.