転写因子Fra-1を全身に高発現するFra-1マウスの骨形成促進は、骨芽細胞の異常な活性に起因しているが、Fra-1マウスより単離した細胞を使用した実験系では再現が出来ず、そのメカニズムは未だ明らかにされていない。本研究では、Tet-Onシステムを用いた時間特異的に遺伝子発現を誘導可能なiFra-1マウスを用い、Fra-1による骨形成誘導のメカニズムを明らかにすることを目的とし、1.遺伝子やタンパクの発現制御を解析するミクロな視点と、2.骨を立体的な形のまま解析するマクロな視点との2点に着目し、さらに時間軸を加え、4次元的にアプローチするという多角的な視野に基づいた総合的研究を試みることとした。本研究より、骨形成のメカニズムや骨の形を4次元的に捉えることで、骨代謝の分子機構を時空間的に解明することができるものと期待された。本年度ではまず、海外共同研究者であるDr.EF.Wagner(スペイン国立がん研究所:IMP)より分与されたinducible Fra-1 (iFra-1)マウスを用い、Fra-1の骨形成亢進のメカニズムを明らかにすることを目的とした。Dox投与前のiFra-1マウスより骨芽細胞前駆細胞、破骨細胞前駆細胞などの細胞を単離培養し、それぞれ分化誘導を行ない、さらにこの分化過程においてDoxを添加するタイミングを変えることにより(分化誘導前にFra-1を誘導するとか、分化誘導後にFra-1を誘導するなど)、それぞれの分化への影響を、経時的に分化マーカーの発現や機能解析を行なう計画であった。しかしながら現在は、輸入したiFra-1マウスの微生物クリーニング、および受精卵の凍結、個体の作製などを行なっている段階であり、詳細な解析は今後の課題となった。
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