研究課題
心房性ナトリウム利尿ペプチド (ANP; Atrial Natriuretic Peptide) は、申請者が所属する国立循環器病研究センターの寒川賢治研究所長らによって単離同定された心臓ホルモンであり、現在急性心不全治療の第一選択薬として臨床応用されている。我々は肺癌手術の際、ハイリスク症例に対して術中より3日間ANPを持続投与することによって、術後心肺合併症を有意に軽減できることを論文報告し、積極的に使用している。肺癌は、術中散布された遊離癌細胞の着床転移によって、根治手術後であっても早期に再発することが多いことが知られているが、術後早期(2年以内)無再発生存率を調べた結果、ANP投与群では非投与群(対照群)と比較して良好な成績であった本研究の目的は、ANPの抗転移作用について、その具体的な作用機序を明らかにすることである。申請者はANPの受容体であるGuanylyl Cyclase-A (GC-A) が高発現している数種類のヒト癌細胞株に対してANPを直接添加する実験を行ったが、直接的な腫瘍増殖抑制効果は認められなかった。そこで我々は、全身臓器の中でGC-Aが最も豊富に発現している血管内皮細胞に着目した。結果、ANPが血管内皮細胞のGC-A受容体を介して、血管内皮細胞の癌細胞との接着を抑制することで癌細胞の着床転移を著明に抑制し得ることをin vitro, in vivo実験系にて確認することができた。
2: おおむね順調に進展している
ANPの抗転移効果について、標的となる臓器(血管)が特定できたこと、さらにはその効果について、in vitro及びin vivoの系で確認できたことから、当研究について概ね順調に進展していると考えられる。
今後は標的となる血管内皮細胞において、ANPがどのような働きをしているのか、より詳細な機序の解明を進めていく予定である。
詳細な機序解明の為、血管内皮細胞のin vitroの系における定量PCR法、Western blot法を用いた解析を行う予定であり、それに必要な物品を購入予定である。また平成23年度中に行った研究成果については、積極的に国内外に学会発表を行う予定であり、出張費用を計上予定である。
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