研究課題
心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の癌転移予防効果について、その作用機序を明らかにし、臨床応用への具体的道筋を示すことが本研究の目的である。申請者は、B16マウスメラノーマをマウス尾静脈に注入する肺転移モデル(2週間観察モデル)を作製し、ANP投与群と生食群で比較検討したところ、本細胞株はANPの受容体であるGC-Aの発現を認めないにも関わらず、ANP投与によって肺転移が顕著に抑制された。次に、血管内皮特異的GC-Aノックアウトマウスに対して同様の実験を行ったところ、野生型マウスと比較して肺転移が顕著に多く、血管内皮特異的GC-A過剰発現マウスでは、逆に肺転移が顕著に少なかった。以上の結果より、ANPの癌転移抑制効果について、宿主側の血管内皮細胞が果たしている役割は極めて大きいと考えた。さらに、固形癌の自然血行性転移に対する有効性を評価する為、マウス乳癌(4T1)及び大腸癌(Colon26)を同所移植した固形癌モデルを作製し、ANP群と生食群に分けて約4週間観察したところ、ANP群では主病巣の大きさは変わらなかったものの、肺転移が有意に少なかったことから、ANPが手術不能な担癌患者に対しても、抗転移療法としての有効性を発揮できる可能性が示された。ANPの癌転移抑制効果は、血管を制御することによって、癌転移を予防するメカニズムである。癌細胞そのものを標的とせず、癌微小環境のうち、血管制御を主体とした本治療法は、既存の抗がん剤治療と比較して、安全性が高く、かつ今までにない革新的な治療を提供できる可能性がある。この詳細なメカニズムの解明に向けて、さらに研究を推進していきたいと考えている。
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Eur J Cardiothorac Surg.
巻: なし
J Thorac Cardiovasc Surg.
巻: 143 ページ: 488-494
10.1016/j.jtcvs.2009.11.073.
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doi: 10.1093/ejcts/ezr202.