本研究では、新たな抗血栓薬の脳虚血急性期治療への応用を目標に、臨床上の脳虚血に近い疾患モデルであるラット脳虚血モデルを用いて、その効用を評価した。抗血栓薬としては、tissue plasminogen activatorの使用が現時点では標準となっているが、出血性梗塞の頻度は低くなく、therapeutic time windowの広い、より安全な薬剤の登場が待たれているのが現状である。本研究では、新たな抗血栓薬であるStachybotrys microspora triprenyl phenol-7 (SMTP-7)をラット脳虚血モデルに経静脈的に投与を行い、非投与群とSMTP-7投与群において梗塞巣の大きさ、脳血流量の変化、神経細胞死のマーカーの発現を比較検討した。ラット脳虚血モデルを用いて虚血侵襲ごに経静脈的に薬剤を投与した結果、SMTP-7投与群では有意に梗塞巣の抑制効果が確認され、虚血再灌流に伴う脳血流の一過性の上昇が抑えられていた。また、脳虚血後の脳切片をサンプリングし神経細胞死のマーカーについて免疫組織染色法とWestern blot法によって発現を比較検討した結果、薬剤投与群での有意な発現の低下が確認された。SMTP-7は虚血再灌流侵襲に対して経静脈投与を行うことで有意な脳保護効果を有していることが確認された。今後、脳梗塞急性期の抗血栓療法への応用は期待できる結果が得られた。これらの結果から、SMTP-7の脳虚血急性期への有効性が期待され、さらなる研究実績の蓄積によって臨床応用の可能性が待たれるものと考えられた。
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