研究課題/領域番号 |
23791584
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
加藤 幸成 山形大学, 医学部, 准教授 (00571811)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | IDH1/2 / モノクローナル抗体 / グリオーマ |
研究概要 |
イソクエン酸脱水素酵素(isocitrate dehydrogenase: IDH)は、ヒトではIDH1,IDH2,IDH3の3つのサブタイプが知られている。そのうちIDH1/2は、WHO分類のグレードII、IIIのグリオーマや、低グレードグリオーマから進行したグレードIVのグリオブラストーマ(secondary glioblastoma)において、高頻度に点突然変異が見られる。一方で、グリオブラストーマとして初発するグリオーマ(primary/de novo glioblastoma)ではほとんど変異が検出されない。また、変異型IDH1/2が検出されるグリオーマの予後は、野生型IDH1/2の予後よりも格段に良く、グリオーマの予後診断マーカーとして有用である。今年度は、変異型IDH1/2に対する特異的モノクローナル抗体を樹立を試みた。まず、各種IDH1/2のペプチドを合成し、BALB/cマウスに免疫した。次に、それぞれの変異型IDH1および野生型IDH1/2に対する特異的なモノクローナル抗体をELISA法により選択し、免疫組織染色およびWestern-blot法により、その特異性を確認した。その結果、IDH1の変異型で最も頻度の高いR132Hに対する抗体(HMab-1)および、比較的頻度の高いR132Sに対する抗体(SMab-1)を樹立した。また、野生型IDH1/2に対する特異的抗体(RMab-3およびRMab-22)を樹立した。HMab-1やSMab-1は野生型IDH1を認識せず、それぞれ、R132HあるいはR132Sのみを特異的に認識することを、ELISA法、Western-blot法、免疫組織染色にて確認した。新規樹立抗体は免疫組織染色に有用であることから、グリオーマの診断や治療方針の決定に役立つと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度に樹立した抗体(HMab-1, SMab-1)を組み合わせると、変異型IDH1/2の90%を認識することができる。残り10%の変異に対する抗体を、次年度中に樹立することを目標とする。
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今後の研究の推進方策 |
すでに、今年度に樹立した抗体(HMab-1, SMab-1)を組み合わせると、変異型IDH1/2の90%を認識することができる。しかし、IDH1/2のすべての変異型を認識するためには、残り10%の変異型IDH1(R132C, R132G, R132L)と変異型IDH2(R172K, R172M)に対する抗体が必要となる。これらの抗体をカクテルにすることにより、すべての変異型IDH1/2を検出する臨床検査キットを作製することを目標とする。さらに、樹立抗体を用いて、変異型IDH1/2によるグリオーマの発生メカニズムの解明を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
まず、グリオーマ組織の免疫組織染色に有用であることを検証するとともに、IDH1/2のダイレクトシークエンスの結果と照合し、抗体の感度・特異度を比較する。さらに、臨床応用が可能かどうかを、多施設との臨床研究により検証する。また、グリオーマの血清を用いた免疫沈降法により、血清診断マーカーの可能性を探索する。次に、変異型IDH1/2によるグリオーマの発生メカニズムの解明を行う。具体的には、大腸菌で発現させた各種変異型IDH1/2リコンビナントタンパク質を用いて、それらに結合するタンパク質をグリオーマ細胞株から同定し、機能解析を行う。また、本研究で樹立した特異的抗変異型IDH1/2抗体により、変異型IDH1/2との共役分子をグリオーマの臨床検体から免疫沈降し、機能解析を実施する。さらに、変異型抗体の樹立を行う。すなわち、残り10%の変異型IDH1(R132C, R132G, R132L)と変異型IDH2(R172K, R172M)に対する抗体を順次作製する。
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