研究課題/領域番号 |
23791586
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
甲賀 智之 埼玉医科大学, 医学部, 助教 (40456124)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 拡散テンソル / トラクトグラフィ / 白質線維 / 定位放射線治療 / ガンマナイフ |
研究概要 |
ガンマナイフ治療に伴う合併症を減らすべく、拡散テンソルトラクトグラフィを治療計画に統合することを試みた。LINUXのワークステーションにおいて、トラクトグラフィを通常のMR画像と合成し、DICOM化することで、ガンマナイフの治療計画ソフトに導入することが可能となった。この作業がルーチン化したために、錐体路、視放線、弓状束に近接する病変の治療において、トラクトグラフィを統合した治療計画を行うことが可能となった。トラクトグラフィを併用して治療した症例をデータベース化し、その治療成績を検討した。140例の脳動静脈奇形の患者において、トラクトグラフィを併用して治療計画を行った。以前の研究結果から、錐体路、視放線、弓状束の耐用線量は20Gy、10Gy、15Gy程度と考えられていたため、それぞれの白質線維への照射線量が、その耐用線量を可及的に超えないよう治療計画を修正した。その治療成績を検証すると、治療後の神経症状の悪化は3.5%であった。一般にガンマナイフ治療後の神経症状の悪化は5-20%と報告されており、その historical control と比較すると有害事象は少なかったということができ、トラクトグラフィを併用することでガンマナイフ治療の有害事象を少なくすることが可能であると示唆された。今後、より詳細な検証によって、トラクトグラフィ導入の治療結果に与える効果につき検討する必要があるものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トラクトグラフィを簡便にガンマナイフの治療計画に統合するシステムを構築した。さらにトラクトグラフィ併用治療の成績をデータベース化し、簡易に参照できるシステムを構築した。これらに基づき、概要ではあるが治療成績を検証し、トラクトグラフィの治療計画への統合によって、ガンマナイフ治療に伴う有害事象が減少した可能性があると示唆される結果を得た。おおむね、予定通りの進捗状況が得られているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
トラクトグラフィを併用することでガンマナイフ治療の有害事象を少なくすることが可能であると示唆される結果であったが、有害事象の低下にトラクトグラフィ併用が有意に貢献したものであるかどうかが、依然不明である。また治療計画を修正することで脳動静脈奇形の治療目標である閉塞率に影響が生じないかどうかも重要な点である。今後の研究ではさらなる症例の蓄積と、詳細な解析を加えることによって、これらの点を明らかにすることを目標とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
トラクトグラフィをガンマナイフ治療計画に統合するシステムとしてのハードは構築されたが、汎用化が困難であったため、汎用化を可能にするワークステーションとソフトの購入を平成23年度に予定していたが、ワークステーションの納品が平成24年度となったために、残金が生じた。平成24年度においては、このワークステーションを購入するとともに、解析のために必要なソフトウェアの購入を予定している。また研究成果発表のための学会出張費や、論文出版費用に研究費を充てる予定である。
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