本研究の目的は、脳磁図計測と非侵襲的に脳刺激を行うことができる経頭蓋磁気刺激を用いて、言語機能局在の評価を行うことである。 まず,言語課題時の脳活動計測として脳磁図計測を行った。得られた脳磁図データに対して周波数成分の変化を調べ、脳活動部位を判定した。空間フィルタを用いることで三次元脳上に言語関連脳活動部位を重畳し、更にこれを経時的に調べた。後頭葉の視覚野に始まり、側頭葉底面の文字認識、感覚性言語野、運動性言語野と順に、賦活される領域を明らかにすることができた。3つの課題の比較では、運動想起課題では運動性言語野、線画呼称課題では側頭葉後部の反応が強いという違いが明らかとなった。また、動詞想起課題では、今まで脳磁図では反応が捉えにくいとされていた高周波成分の律動変化を捉えることができた。この反応は、局所の脳活動を反映していると言われているが、高い測定感度が要求されるため、脳滋図や頭皮脳波などでは計測が困難であった。これを利用することで、非侵襲的な言語機能評価法の精度向上につながることが期待される。 さらに、言語課題時に経頭蓋磁気刺激を行った。刺激部位は運動言語野と感覚言語である。線画を視覚提示してから言語野を刺激するまでの時間を変化させ、その時の反応時間を計測することで、経頭蓋磁気刺激による言語野への影響を調べた。運動性言語野の刺激では、約300ms後の刺激の時に左側刺激で優位に反応時間の遅延が認められた。感覚性言語野では、全体的に左側で反応時間が遅延する傾向が認められたが、反応時間のはらつきが多く認められ、被験者間の差が大きかった。反応変化ぼ運動性言語野で捉えやすく、時間的には脳磁図解析と経頭蓋磁気刺激の結果がよく一致した。 これらの知見は、臨床的には脳機能局の同定法や優位半球の同定法などへの応用や、機能温存手術などに役立つと期待される。
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