研究概要 |
当院で治療した当院治療後の小児髄芽腫患者25例(標準リスク群は8例、高リスク群は17例)存在し、全例で腫瘍摘出後、全脳全脊髄への照射は18Gy、3歳未満には放射線治療を行わなかった。この中で、生存中の長期follow up中の症例に対して、経時的に高次脳機能検査を行った。16歳以上の患者には、ウェクスラー成人知能検査(Wechsler Adult Intelligence Scale-revised : WAIS-R)を使用し、16歳以下に関しては、Wechsler Intelligence Scale for Children (WISC-R, 7-16歳)を行った。追跡調査が可能な症例で拡散テンソル画像、潅流画像、磁化移動比画像、MR angiographyを用いて、白質および脳血管・血流の経時的変化について検討した。また、さらに治療終了後2年以上経過した症例について、全例で内分泌学的評価を実施した。QOL評価(PediQL、EORTC-QLQ-C30、FACT-Br、SF- 36version2)を行い、就学や就職の状況も検討した。 治療後から測定までの期間は3~7年(平均4.75年)であった。再発例は腫瘍が寛解してもIQ低下が著しかった。再発例を除く症例ではtotal IQ:83.6±10.6、verbal IQ(VIQ):94.4±8.6、performance IQ(PIQ):74.8±12.8であった。PIQはVIQに比して低下しやすい傾向があり、特に知覚統合、処理速度の低下が認められた。小脳症状、脳神経症状の訴えが強い患児はPIQが低い傾向があった。治療時年齢とIQとの有意な相関は認めなかった。白質および脳血管・血流における有意な変化は現在のところ認めなかった。内分泌機能障害に関しては、甲状腺機能異常、成長ホルモン分泌低下を高率に認めた。QOL調査に関しては現在解析中の現状である。不登校や外観上の問題が就学を妨げている場合が存在した。
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