研究課題/領域番号 |
23791609
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
石坂 俊輔 長崎大学, 大学病院, 医員 (10597363)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 正常プリオン蛋白 / 脳梗塞 / 間葉系幹細胞 / 神経再生 |
研究概要 |
我々は1996年に独自にプリオン蛋白遺伝子欠損マウスに樹立し、これを用いた実験でプリオン蛋白遺伝子下流に存在するプリオン蛋白類似蛋白(ドッペル)が関連する神経細胞死を報告した。さらに同ノックアウトマウスを用いて脳虚血における正常プリオン蛋白の神経保護効果を示した。しかし正常プリオン蛋白の機能は未だ不明な点が多く、我々は正常プリオン蛋白が神経再生を促進させているという仮説をもとに研究を計画した。まず、脳梗塞モデルの作成を行った。マウスに先立ち、ラットを用いて中大脳動脈閉塞(一過性脳虚血)モデルを作成。閉塞60分で組織学的に(TTC染色)良好な梗塞巣を確認した。続いてこの手法をプリオン蛋白遺伝子欠損マウスに行ったが、mortalityが高く、良好なモデルが作成できずに難渋した。現在、梗塞作成を低酸素虚血(hypoxia-ischemia)に変更し、解析を行っている。移植細胞については当施設で確保しているHuman Mesenchymal Stem Cellを用いてラット脳内投与を行い、良好に細胞が生着していることが明らかとなった。また移植群では梗塞サイズが有意に縮小した。更にグリア瘢痕の形成が有意に抑制された。組織学的解析では幹細胞の生着部位に一致して急性期の活性化ミクログリアが減少した。慢性期では梗塞周囲の神経栄養因子の発現や血管新生が有意に増加した。また移植し間葉系幹細胞は血管内皮、アストロサイトに分化していた。慢性期においても梗塞周囲、脳梁を中心に生着し神経栄養因子を分泌しており神経再構築に関与している事を明らかにした。今後は確立したこれらの実験系を基に、プリオン蛋白遺伝子に対して幹細胞移植を行ない、プリオン蛋白と神経再生の関係を探る。今後はマウス低酸素虚血モデルの確立後に脳内投与を行い解析予定としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
プリオン蛋白遺伝子欠損マウスに対する梗塞モデルの作成に難渋している。予備実験としてはラットを用いて良好に作成できているが、恐らく当施設で用いている遺伝子改変マウスは虚血、あるいは手術に対し脆弱であると考えられた。現在は低酸素モデルを採用している。
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今後の研究の推進方策 |
KOマウスの脳梗塞モデルを確立し、平成23年度と同様の移植実験を行う。ヒト間葉系幹細胞を培養し、脳梗塞モデルに投与を行う。行動学的、組織学的解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
特に組織学的解析に必要な抗体、幹細胞の培養、動物の維持費用、サイトカイン解析用のELISAキットに研究費を使用する。
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