研究課題/領域番号 |
23791619
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研究機関 | 公益財団法人田附興風会 |
研究代表者 |
西田 南海子 公益財団法人田附興風会, 医学研究所 第7研究部, 研究員 (80450237)
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キーワード | 特発性正常圧水頭症 / 認知機能 / 前頭葉機能低下 / 歩行障害 / 睡眠 / 拡散テンソル / 髄液LPGDS |
研究概要 |
高齢者の特発性正常圧水頭症は歩行・排尿・認知機能障害を三徴とし、外科的脳脊髄液短絡術によって症状を緩和できるという点で、症候学的に似たアルツハイマー病やパーキンソン病のような変性疾患との鑑別が重要である。高齢者一般において、睡眠障害は頻度が高く、その質は日常生活動作のレベルに直結する。本研究では、外科治療前後の本疾患における睡眠・歩行に着目、髄液・血清中の神経調節物質、MRI拡散強調画像を用いた関連脳機能野の変化を評価し、その鑑別・病態解明の一助とし、加齢とともに変化するヒトの睡眠・歩行のメカニズムに迫ることを目的としている。 24年度までに、手術適応を決めるための評価入院にエントリーした患者を対象とし、通常の三徴(歩行障害・排尿障害・認知機能低下)の評価(Grading Scale/MMSE/FAB/ up & go test)に加えて睡眠障害の自覚的評価(PSQI/ESS)、MRI撮像、及びポリソムノグラフィーを施行しながら、髄液の精査及び画像解析システムの立ち上げを行う予定であった。PSQIを施行した26名では5.7±2.9とカットオフレベルの5を超えており(何らかの不眠有)、夜間の頻尿の影響が大きい印象である。ESSでは5.0±3.4と病的過眠の傾向はなさそうである。術前後のPSGには12名協力を得た。直後から睡眠構築に変化を認めている。今後の外来レベルでの負担のない追跡に向けて、6名に夢眠計(簡易ポリソムノグラフィー)での同時記録を受けていただいた。また、FSLをベースとしたDTI解析に向けてPCの整備と変換作業、解析データベースの蓄積を始めた。現在10例でシャント前後の画像データがあり、これを、閉塞性水頭症として神経内視鏡で治療した8例の画像データと比較検討することを計画している。また、治療前後でマーカー装着の3次元歩行ビデオに目標通り10例に協力頂いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実績の概要に記載したように、睡眠障害の評価・画像評価・歩行評価の項目ともに年度の目標人数の検査を終了しており、画像評価については解析ワークステーションの立ち上げを行い、その他も各々解析可能なサンプリングが行えているところまでは確認しているが、詳細な評価は平成25年度の課題である。ひとつ進捗があったこととしては、髄液排除テストに至った24名の髄液について、大阪バイオサイエンス研究所でLPGDSの測定を行ったところ、前頭葉機能検査であるFABとの有意な相関を認めた点である。LPGDSについてはアルツハイマー病に関連してアミロイドβのシャペロンのひとつとの報告があり、認知機能との相関は合併する変性疾患の有無や特発性正常圧水頭症そのものの認知機能低下のメカニズムに関わる問題なので、追求の余地があると考えられる。これについては施設内の神経内科医の協力を得て、京都大学神経内科にてアミロイドβ及びtauなどの髄液濃度の追加測定を行っていただくことになった。
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今後の研究の推進方策 |
上記のように、睡眠学的見地のみならず、髄液LPGDSの問題は認知機能低下にとっても重要なので、他施設の協力を仰ぎながらデータを蓄積する。また、認知機能についてはFAB/ MMSEを基準の認知機能検査とし、日立製作所のご好意により、指タップ運動測定機器をお借りして、運動性の機能・リズム障害などの定量的データベースを追加で構築する作業を継続する。歩行の評価については、24年度までに3次元歩行解析装置(2カメラ)を購入し、10名で治療前後の歩行撮影を完了している。従来のビデオ撮影による歩数、スピードの評価に加え、床に対する体幹の角度など姿勢の評価を計画している。PSGの解析結果の統計的評価も残されている。また、MRI撮像DATA(DTI対応)を蓄積しており、長期的に歩行・睡眠の観点よりROI(脳室周囲白質、基底核、視床、視床下部、脳幹まで)を決めて、拡散強調画像を用いて脳の微細な構造変化の解析を行う予定である。認知機能の観点からは交連線維に着目しているが、より客観性を高めるために、前後の脳室の形態変化の問題を克服できるFSL/TBSSなどの適した解析方法を検討している。
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次年度の研究費の使用計画 |
23年度交付額が、機器購入などの経費削減で24年度に13万円繰り越した。24年度は予定通りにデータの蓄積を進めたが、MATLABをダウンロード形式で購入するなどして、やや安価となり、同様の金額を次年度に繰り越すことになった。これについては、蓄積したデータ管理の経費などや、引き続きのPSGの測定・解析費用、髄液検査に伴う諸費用、及び情報収集のための学会出席費用などで有効に活用する予定とする。
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