変形性膝関節症は関節軟骨ばかりでなく軟骨下骨もその病因に関与する。軟骨下骨の評価方法はMRIやCTでも可能だが、ミクロレベルでの評価は難しい。本研究は、東北大学医工学研究科・医用イメージング研究分野 西條芳文教授開発したレーザー光を照射し、光音響現象により発生した超音波を中心周波数40 MHzの超音波振動子で受信し画像化する非侵襲型の「光音響顕微鏡装置」を用いて、正常な関節軟骨ならびに軟骨下骨の質的評価の基礎的なデータの収集、また独自に開発した変形性関節症モデルを用い、関節軟骨・軟骨下骨の経時的変化のデータ収集を目的である。 まず関節軟骨および軟骨下骨の評価に最適な半導体レーザー出力、凹面超音波振動子の設定を行った。半導体レーザーはレーザー出力:420μJ、 波長:532nm パルス幅 3.2ns、繰り返し周波数 50Hz、また超音波振動子は中心周波数 50MHz、焦点距離 15 mmが最適であった。次に正常ラット膝関節から脛骨の関節軟骨‐骨複合体を取り出し、評価したところ、超音波では評価できなかった軟骨下骨の描出が可能となった。レーザーは特に赤色に吸収されやすく、海綿骨内の赤血球を反映しているものと推察された。続いてラット膝関節不動化モデルによる変形性膝関節症を作製し、同様の評価を行った。不動化期間が長くなるほど変形が進行するモデルであるが、4、8週と不動化期間が長くなるとともに軟骨下骨の信号強度が増す(レーザー吸収が増す)ことが確認された。関節軟骨と軟骨下骨で統計学的に有意に上昇しており、従来から指摘されている血管新生を指示する結果であった。 本研究から、世界で初めて関節軟骨および軟骨下骨の同時評価が可能となり、病勢も反映していることが予想され、今後臨床応用へむけたさらなる研究が必要である。
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